研究実績の概要 |
骨髄間葉系幹細胞(MSC)は多分化能・増殖能を有し、骨・軟骨、脂肪細胞など、様々な細胞に分化することができる。しかしながら、分裂・増殖を繰り返すことで分化能が低下してしまう。本研究の目的は、骨形成抑因子を同定し、骨芽細胞分化への影響を検討することである。 ヒト骨髄液を培養し、培養開始早期のMSCと継代を繰り返したMSCの遺伝子発現をマイクロアレイで比較し、SERPIN B2, EPHA5, SCN9A, NTF3, SCINなどが継代・増殖により発現が亢進することが確認され、これらを分化抑制因子の候補として検討を進めていくこととした。 この中でEPHA5に関しては細胞膜上に存在し分泌されない。そこで継代・増殖を繰り返してEPHA5の発現を亢進させたMSCとそうでないMSCを共培養で評価した。非接触系での共培養に比較して、混合した培養した接触系の共培養で、骨芽細胞分化が抑制されていることが確認され、EPHA5が骨形成抑制因子のひとつであると考えられた。 他の因子に関しては、過剰発現細胞とノックアウト細胞を使用して影響を評価を行った。5種類の候補因子に関して、3種類の不死化MSCに対してレンチウィルスによる導入を試みたが、EPHA5を発現したMSCのクローン1種類を得られたにとどまった。また逆に、候補因子をCRISPRベクターを用いてノックアウトした細胞のクローニングも試みたが、SERPIN B2をノックアウトしたクローン1種類のみを得るにとどまった。SERPIN B2ノックアウト細胞を培養して得られたコンディションドメディウムをMSCの培養に用い骨芽細胞分化への影響を評価した。骨髄を培養して得られたMSC、3検体に関して評価を行ったが、骨芽細胞分化への影響は細胞ごとに異なり、少なくともSERPIN B2が絶対的な骨分化抑制因子である可能性は低いと考えられた。
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