研究課題
近年の画像機器及び画像処理の進化によって、術前の高精度なシミュレーションが可能となり実際の手術に応用されている。しかし術前に解析したデータを如何にして直接、手術に反映させるかは今なお課題である。我々は重大な神経血管損傷を含む合併症の報告が多い肘関節鏡手術においてAugmented Reality(拡張現実)と呼ばれる現実の映像にコンピュータ・グラフィックス(CG)を重畳表示する技術を開発した。健常ボランティアの肘関節MRIを撮影し、画像解析ソフトVo Tracerを用いて骨及び神経の情報を抽出する。データをSTLに変換し3Dプリンターを用いて実態モデルを作成した。実態モデルと肘関節鏡のスコープに位置追跡用の可視性マーカーを装着し、3次元ポジショントラッカー(MicronTracker3)を用いて関節鏡画像に骨と神経の位置情報をリアルタイムに重畳表示した。次にニホンザルの新鮮凍結肘を用いて肘関節MRIを撮影し、骨と神経の情報を抽出した。実態モデルと同様に、ポジショントラッカーと可視性マーカーを用いて肘関節鏡画像に術前取り込んだ画像を重畳表示した。結果実態モデルおよびニホンザルの肘関節を用いて、僅かな誤差はあるものの重畳表示が可能であった。肘関節鏡画像のレンズ歪みはパラメータのキャリブレーションパターンから補正できていた。許容しうる精度で肘関節鏡に拡張現実を導入することが可能であった。この技術によって病変の位置や鏡視画像では見えていない神経血管の描出が可能となり、肘関節鏡手術がより安全になる。今後は誤差の定量化と臨床への応用を検討している。
すべて 2017
すべて 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)