研究課題/領域番号 |
26462264
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
濱田 健一郎 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (50649043)
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研究分担者 |
王谷 英達 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (60727965)
中 紀文 大阪大学, 医学系研究科, 講師 (90601964)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | Synovial sarcoma / Targeted therapy / Xenograft model / Fusion gene / Pre-clinical study |
研究実績の概要 |
本研究の目的は申請者らが樹立したドキシサイクリン誘導SS18-SSX抑制滑膜肉腫細胞株を用いてin vitro, in vivoで滑膜肉腫細胞における融合遺伝子SS18-SSX抑制による抗腫瘍効果を評価し、融合遺伝子が創薬ターゲットとなり得るかを評価すること、融合遺伝子のin vitro, in vivoでの機能を評価することである。また、融合遺伝子抑制単独の抗腫瘍効果に加え、融合遺伝子SS18-SSX抑制下での既存抗癌剤あるいは新規分子標的治療薬併用の抗腫瘍効果を評価することである。研究の進行は以下のとおりである。1)滑膜肉腫特異的融合遺伝子SS18-SSXの腫瘍原性の評価;滑膜肉腫特異的融合遺伝子が、腫瘍原性に与える影響を評価した。In vivo実験系においてSS18-SSX抑制群で腫瘍形成が有意に抑制されていることが確認できた。SS18-SSXが腫瘍の発生に影響し新規転移抑制の治療ターゲットとなりうることを確認した。2)滑膜肉腫特異的融合遺伝子SS18-SSX抑制による抗腫瘍効果の評価;滑膜肉腫特異的融合遺伝子が、腫瘍増殖に与える影響を評価した。In vitro, in vivoの実験系においてSS18-SSX抑制群で腫瘍増大が有意に抑制されており、既存腫瘍に対する抗腫瘍効果が確認できた。SS18-SSXが既存腫瘍に対する治療ターゲットとなりうることが確認できた3)融合遺伝子標的治療と他治療薬との治療相乗効果評価;SS18-SSXは腫瘍の分化能に影響し腫瘍増殖に寄与することが報告されており、また分化誘導制御薬であるATRAも滑膜肉腫に対する抗腫瘍効果が報告されている。SS18-SSX抑制群におけるATRAの治療相乗効果を評価した。SS18-SSX抑制群、ATRA投与群ともに有意に腫瘍増殖が抑制されていたが、両薬剤の治療相乗効果は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度までに申請者らが樹立したドキシサイクリン誘導SS18-SSX抑制滑膜肉腫細胞株を用いてin vitro、in vivoで滑膜肉腫細胞における融合遺伝子SS18-SSX抑制による既存腫瘍に対する抗腫瘍効果を確認し、滑膜肉腫特異的融合遺伝子SS18-SSXが治療標的となり得ることを確認した。また滑膜肉腫特異的融合遺伝子が、腫瘍原性に与えるかどうかを評価した。滑膜肉腫特異的融合遺伝子SS18-SSXが抑制されると腫瘍の発生が抑制され、融合遺伝子は腫瘍原生に影響を与えることが確認できた。本年度は他の抗腫瘍薬との相乗効果評価を行った。既存治療薬との併用という方法もあったが、SS18-SSXが起源細胞の分化誘導を偏向させ癌化させるという既報に基づき分化誘導薬として滑膜肉腫に対する抗腫瘍効果が報告されているATRAを使用することとした。ATRAは白血病の分子標的治療薬として使用されており、SS8-SSXによる分化誘導を抑制し、正常分化誘導を促すことを期待し使用した。しかしながら細胞刺激性が強くヌードマウスに対する投与方法、投与量の選定に時間がかかり計画よりも若干遅れることとなった。また実験結果はSS18-SSX抑制による腫瘍抑制効果が大きかったため、それぞれの薬剤で治療効果を認めたものの、相乗効果を認められなかった。SS18-SSX抑制のメカニズムをさらに詳細に検討し相乗効果の期待できる治療法を検討する必要があると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
形成された腫瘍に対する滑膜肉腫特異的融合遺伝子SS18-SSXの抗腫瘍効果およびSS18-SSXの腫瘍原性に与える影響が確認できた。これらの結果によりSS18-SSXが腫瘍に対する治療標的となり得ること、また再発・転移予防の治療標的となり得ることが判明した。既存または他の新規治療法と融合遺伝子標的治療の併用療法について検討する過程において、相乗効果を認める薬剤の選定は容易でなく既報からの選定では非効率出来であると考えられた。また、実際にSS18-SSXを抑制する薬剤の作成・選定も容易でないため、SS18-SSX抑制における腫瘍抑制の分子生物学的メカニズムを解析し治療に結びつけるのが必要と考えられた。 SS18-SSXはその分子メカニズムとしてSWI/SNF融合体を形成しDNAのメチル化を制御し遺伝子発現を制御することが主な作用機序であると報告されている。今後はSS18-SSX抑制過程における遺伝子発現を経時的、網羅的に調査し治療効果の期待できるターゲットを検索する予定である。具体的には我々が樹立したドキシサイクリン誘導SS18-SSX抑制滑膜肉腫細胞株を用いSS18-SSXを抑制し、細胞のメチル化の状態をメチレーションアレイにて経時的に調査することによりSS18-SSXによる遺伝子発現変化を網羅的に確認する。発現変化の大きい遺伝子の中から治療ターゲット候補を選定し実際の細胞において本当に変化しているかのValidationを行う。実際に変化を認めた遺伝子の分子メカニズム、抗腫瘍効果等をを調査し治療ターゲットとなり得るかを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果の発表を海外で行う予定であったが世界情勢の不安定性に伴い発表を自粛したため旅費が生じなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
今後は海外での発表を行う予定である。
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