研究課題/領域番号 |
26462265
|
研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
河本 旭哉 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30420558)
|
研究分担者 |
原 仁美 神戸大学, 医学部附属病院, 助教 (40437489)
大西 康央 神戸大学, 医学部附属病院, 医員 (50707122)
秋末 敏宏 神戸大学, 保健学研究科, 教授 (90379363)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 炭酸ガス経皮治療 / 骨軟部肉腫 / 肉腫幹細胞 / 低酸素環境 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は骨軟部肉腫においてその悪性度に寄与していると考えられている肉腫幹細胞 (Sarcoma stem cell)の存在を示し,肉腫幹細胞に対する新たな治療法である炭酸ガス経皮投与の有用性を評価することである. これまでに当科研究室で以前より研究に用いているヒト悪性線維性組織球腫(MFH)由来細胞株であるTNMY-1およびNara-Hの2株を用い,CD24,CD29などを幹細胞マーカーとして発現陽性および陰性細胞をsortingし,個別培養を行ったところ,発現の強弱によって細胞増殖能に差がある傾向をみたものの,現在まで明らかな有意差が得られておらず,sortingおよび培養条件の検討を続けて行っている. また上記ヒトMFH由来細胞株2株,ヒト骨肉腫由来細胞株MG63,マウス高肺転移性骨肉腫細胞株LM8をin vitroにおいて通常酸素環境下,低酸素環境下,低酸素環境下から通常酸素環境下に戻したもの,の3群に分け,未分化能の指標となるiPS関連遺伝子(Oct3/4,Sox2,c-Myc,Klf-4,Nanog)発現を検討したところ,いずれの細胞株においても低酸素環境下でその発現が高い傾向にあり,骨軟部肉腫においても低酸素環境によって未分化能,つまり幹細胞活性が増強する可能性が示された.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究においては,本年度までにヒトMFH由来細胞株から幹細胞マーカーを用いたsortingにより,肉腫幹細胞の分離・培養,in vitroにおける肉腫幹細胞の性質・悪性度の評価,肉腫幹細胞モデルマウスの作成,を行う予定であったが,幹細胞マーカーの発現状態を指標としたsortingでは分離細胞数が少なく,またsorting操作による細胞への影響によって,その後の細胞培養が予定通りに行えてなかった.そのため肉腫幹細胞そのものの同定が行えておらず,その未分化能の評価,モデルマウス作成の過程においても着手出来ていない. 以上から本研究の遂行に関し,現在までの達成度はやや遅れているものと判断し,本年度以降の遂行に支障をきたす可能性があると考えられる.
|
今後の研究の推進方策 |
まず本研究の今後の推進方策については,上記問題点について熟考,再評価し,改善とともに遂行していく必要がある. ヒトMFH由来細胞株からの肉腫幹細胞の分離・同定,培養の過程における細胞数の調整,sorting方法の最適化,sorting後細胞の培養環境の評価についてはすでに検討をはじめている.その後肉腫幹細胞モデルマウスを用いたin vivoでの検討を可及的迅速に進めていく予定である. また細胞の未分化能を評価する指標として,iPS関連遺伝子を検討していく方針とした.従来行ってきた通常の骨軟部肉腫モデルマウスに対して炭酸ガス経皮投与を行い,腫瘍内酸素環境の変化とiPS関連遺伝子の発現変化についても検討していく予定である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
前述のごとく,本研究においては,本年度までにヒトMFH由来細胞株からの肉腫幹細胞の分離・培養,in vitroにおける肉腫幹細胞の性質・悪性度の評価,肉腫幹細胞モデルマウスの作成,を行う予定であったが,肉腫幹細胞の分離・培養の過程で予定が遅れている.そのため肉腫幹細胞モデルマウスの作成は行えておらず,動物実験にかかる費用が不要であったため予定使用額に変更が生じた.
|
次年度使用額の使用計画 |
前述の今後の研究推進方策で記載した通り,肉腫幹細胞の分離・同定,培養の過程における条件検討とともに,本年度に予定していた肉腫幹細胞モデルマウスを用いたin vivoでの検討を行う予定としている.また同時に通常の骨軟部肉腫モデルマウスを用いて,炭酸ガス経皮投与よる腫瘍内酸素環境の変化とiPS関連遺伝子の発現変化についても検討していく予定であり,前年度未使用額を合わせて本年度に使用する予定である.
|