研究実績の概要 |
Heat shock protein70 (Hsp70) は,がん細胞内に高率に発現しており,温熱療法や抗がん剤の治療効果を減弱させることで,予後を悪化させる.骨肉腫細胞においてもHsp70の発現が報告されており,Hsp70が骨肉腫に対する化学療法の治療効果を減弱させる原因となっている可能性がある.本研究では骨肉腫細胞株に発現するHsp70をsiRNAで抑制することによって化学療法の第一選択薬として使用されているシスプラチンの増感効果を検討することを目的とした. ヒト骨肉腫細胞株であるMG63に対してシスプラチンを投与し,Western Blotting法,real time RT-PCR法でHsp70の発現の変化を観察した.次に,siRNAでHsp70を抑制した場合のIC50(50%阻害濃度)の変化を評価した.多くの抗腫瘍効果はアポトーシスの誘導によって生じるため,TUNEL染色,caspase-3 assay,ミトコンドリアの膜電位の変化を測定し,アポトーシス誘導能を評価した. ヒト骨肉腫細胞では,シスプラチンの濃度に依存してHsp70の発現が上昇した.Hsp70の抑制によってシスプラチンのIC50は有意に低下した.Hsp70を抑制した骨肉腫細胞にシスプラチンを投与するとTUNEL assay, caspase-3 assay,ミトコンドリア膜電位の全てでアポトーシスが有意に増強していることが明らかになった. Hsp70の発現を抑制することで骨肉腫細胞株のアポトーシスを誘導できたことから、本方法ではシスプラチンの増感効果が得られることが判明した.Hsp70の抑制は骨肉腫に対する化学療法の新しい補助療法となる可能性を示した.
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