研究課題/領域番号 |
26462279
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
麸谷 博之 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (30248140)
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研究分担者 |
山根木 康嗣 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00434944)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 骨肉腫 / 転移 / 免疫療法 / ヒストン脱アセチル化阻害剤 / 悪性骨腫瘍 |
研究実績の概要 |
骨肉腫細胞による血管新生を抑制することは、直接的な抗腫瘍効果に加えて、血行性遠隔転移も抑制できると考える。我々はヒストン脱アセチル化阻害剤(VPA)単独作用におけるvascular endothelial growth inhibitor(VEGI) /DR3を介した腫瘍新生血管抑制効果をin vitroにて検討し、今年度、欧文雑誌に報告した。これらの効果が、ラパマイシン標的蛋白質(mTOR)阻害剤との併用により更に増強する事をin vitroにて検討した。 1. ヒト骨肉腫に対する影響: (1) mTOR阻害剤はヒト骨肉腫細胞の増殖を抑制し、更にVPAとの併用はその効果を増強した。(2)mTOR阻害剤はVEGIの発現を約20%程度増加させ、VPAとの併用では約2.7倍増加させた。(3) mTOR阻害剤およびVPAとの併用はDR3発現には有意差を認めなかった。(4) mTOR阻害剤およびVPAとの併用はVEGI/DR3結合を阻害するsoluble decoy receptor 3 (DcR3)発現には変化はなかった。 2. ヒト毛細血管内皮細胞に対する影響: (1) mTOR阻害剤およびVPAとの併用はHMVECの増殖に影響を及ぼさなかった。(2) mTOR阻害剤およびVPAとの併用はHMVECに対してVEGIの発現を増加させたが、DR3発現には有意差を認めなかった。(3)VPAはDcR3の発現には有意差を認めなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ラパマイシン標的蛋白質(mTOR)阻害剤単独作用におけるVEGI/DR3を介した直接的腫瘍増殖抑制効果および腫瘍新生血管形成を抑制する可能性が確認され、その効果はヒストン脱アセチル化阻害剤であるVPAとの併用により更に増強されることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はmTOR阻害剤単独およびバルプロン酸の併用効果 (ヒト骨肉腫細胞増殖抑制に及ぼす直接的効果および腫瘍内血管新生抑制効果のメカニズムを詳細に検討する。 次年度の研究費の使用計画 (1) mTOR阻害剤単独およびバルプロン酸併用処理後腫瘍産生VEGI (細胞培養上清)をHMVECに作用させ血管構造形成の阻害を確認する。 (2) mTOR阻害剤単独およびバルプロン酸の併用がヒト骨肉腫細胞の接着能およびintegrin familyを中心とした接着因子発現に対する影響をin vitroの研究から血行性転移の抑制を検討する. (3) mTOR阻害剤耐性の回避を検討する。 a) mTOR阻害剤による長期培養にて、mTOR阻害剤耐性株を作成する.PI3K/Akt/mTOR経路の変異をマイクロアレーにて評価する。b) 上記のa)で確認された期間で、バルプロン酸との併用培養により耐性の回避の可能性を検討する。c) 耐性株に対するIL-18による免疫療法と、バルプロン酸との併用効果を検討する。同時に抗癌剤 (イフォマイド、アドリアシン、メトトレキサート)との併用効果を検討する。(耐性株を作成できなかった場合は,shRNAもしくはsiRNAにて、mTORC1またはmTORC2をknock-downし耐性株を樹立する。)
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次年度使用額が生じた理由 |
1. 購入予定の統計ソフトが以前のもので代用できたため、購入しなかった。2.細胞株は研究分担者が既に購入済みであった。3.実験手法も熟練し、無駄なく早期に良好な実験結果が得られた。4. 海外での学会発表が、国際安全上の問題で不参加となった。
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次年度使用額の使用計画 |
1. 統計解析のためのIBM社SPSS、2.ヒト骨肉腫細胞株、ヒト血管内皮細胞を維持するために細胞培養関連試薬および消耗品、3. mTOR阻害剤および各種阻害剤、抗癌剤、4. mTOR阻害剤耐性株のPI3K/Akt/mTOR経路の変異を検索するためにマイクロアレー、5. ヌードまたはSCIDマウス、6.薬剤投与群の対照としてRecombinant VEGI、7. 実験報告の画像を撮るデジタルカメラやレンズ、8.画像の処理や編集、プレゼンテーションに必要なソフトウェアーの購入を予定している。また、9.研究成果を報告するための学会参加を予定している。
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