研究課題
Superoxide dismutase 2 (Sod2)酵素はミトコンドリア酸化還元バランス維持に重要な役割を果たす。近年、骨細胞が骨代謝の調節細胞として注目されているが、骨細胞におけるSod2の生理的役割は明らかにされていない。本研究は、骨代謝制御における骨細胞でのSod2の役割を明らかにするとともに、骨格筋の恒常性維持への間接的な寄与を明らかにすることを目的とした。骨細胞特異的Dmp1-CreマウスをSod2 floxマウスと交配し、骨細胞特異的Sod2欠損マウス(Sod2 cKO)の作成に成功し、加齢依存的な骨量減少の表現型を明らかにした。この結果より、SOD2は骨細胞の骨細管ネットワークを介した骨代謝制御に重要な役割を担う事が判明した。骨細胞でのミトコンドリア酸化還元バランスの恒常性維持は、骨細管ネットワークを保ち、適切な骨形成と骨吸収による骨リモデリングに必要不可欠であることが明らかとなった。また、本マウスの骨格筋量を調べたところ、中年齢以降に有意な2型骨格筋量の減少が認められた。また、トレッドミルによる強制運動を行ったところ、有意な強制走行時間の短縮が明らかとなった。また、本マウスの骨格筋幹細胞であるサテライト細胞の細胞数、増殖能、筋管細胞への分化能を調べたところ、対照マウスと欠損マウスで有意な差が認められなかった。この結果は、骨細胞の機能不全が間接的に、かつサタライト細胞非依存的に骨格筋量の維持機構を破綻させた可能性を示唆した。
2: おおむね順調に進展している
骨細胞特異的Sod2欠損マウス(Sod2 cKO)の作成に成功し、加齢依存的な骨量減少の表現型を明らかにした。また、本マウスは骨量減少を示した後に、骨格筋量の有意な減少が認められることが明らかとなった。またこの骨格筋量の萎縮には、骨格筋幹細胞であるサテライト細胞の寄与は少ないことも明らかとなった。これらの結果より、SOD2は骨細胞の骨細管ネットワークを介した骨代謝制御に重要な役割を担うとともに、間接的な骨格筋量の維持にも重要な役割を担うことが明らかとなった。
骨細胞特異的SOD2欠損マウスでの骨量減少と骨格筋萎縮の実験データの信頼性を確かめるために、別系統の欠損マウスでも同様の結果が得られるか調べる。骨細胞の分化前細胞である骨芽細胞特異的SOD2欠損マウスと、骨格筋特異的SOD欠損マウスを別々に作出する。それぞれのマウスの運動器(特に顧客筋)の組織学的解析を行い、骨組織のミトコンドリア機能不全が骨格筋組織の恒常性にどのような影響を与えるのか、骨組織と骨格筋組織の組織学的、生化学的な解析、および骨格筋関連遺伝子発現解析で明らかにする。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 7件、 オープンアクセス 4件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件)
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