研究課題
TNF-alpha converting enzyme (Tace) は別称a disintegrin and metallopeptidase domain 17 (Adam17)としても知られ、膜貫通型酵素の一つであり、複数のシグナル経路の活性化に関与する。本研究では、Taceが変形性関節症の発症においてどのような作用を有するかを調べ、その阻害剤が変形性関節症の治療や予防に有用かを検討してきた。Taceを軟骨系細胞株であるATDC5に強制発現させたところ、Taceは、軟骨基質の主成分2型コラーゲンの分解酵素であるmatrix metallopeptidase 13 (MMP-13)など、軟骨異化作用を有する分子群の発現を強く誘導した。またTaceの抑制は、これらの異化分子の発現を抑制する傾向があった。タモキシフェン誘導性の軟骨細胞特異的CreマウスとTace-floxマウスを交配させ、骨格成長後にタモキシフェンを投与して関節軟骨でのみTaceをノックアウトさせ、内側半月板と内側側副靭帯を切除して変形性関節症を誘発したところ、Taceのノックアウトマウスでは有意に軟骨変性が抑制された。TaceのノックアウトによってMMP-13などの軟骨異化分子の発現も抑制されていたが、当初下流シグナルと考えていたNotchシグナルの変動は少なく、これらの作用はEGFシグナルやTNF-alphaを介して起きているのではないかと考え、現在も実験を続けている。またドラッグスクリーニングによって2種類の化合物がTace抑制作用を有することが分かり、野生型マウスの変形性関節症モデルの膝に定期的に注射する実験を行い、現在結果を解析している。
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