研究課題
変形性膝関節症は、その分子基盤が十分に解明されていないため、疾患の原因に基づいた治療法は未だ確立されていない。変形性膝関節症に関する基礎研究を困難にしている要因の一つとして、変形性膝関節症の病態を効率よく再現できる動物モデルが確立されていない点が挙げられる。本研究では、関節軟骨の変性が明らかになる以前に生じる関節内及びその周囲組織の初期変性の同定及び解析を可能とするために、再現性が高く、非侵襲のマウス変形性膝関節症モデルの確立を試み、発症並びに進行の機序を解明することを目的としている。閉経並びに前十字靭帯損傷等に伴う膝関節の力学的不安定化は、変形性膝関節症の重要なリスクファクターであると報告されていることから、本研究では、マウスの閉経モデルである卵巣摘除と関節内に直接的な外科的侵襲を加えることのない、トレッドミルを用いた強制走行を組み合わせる方法で関節軟骨の代謝の変化の観察を行なった。8週齢のメスBalb/cマウスに対して卵巣摘除を施行し、術後1週より6週間の間強制走行させた(1週あたり10km)。卵巣摘除の有無、強制走行の有無で4群(卵巣摘除のみ、卵巣摘除に強制走行、偽手術のみ、偽手術に強制走行)に分けて比較検討を行なったところ、卵巣摘除に加えて強制走行を行った群において有意な関節軟骨の変性を観察した。また、関節軟骨の変性に伴い、隣接する滑膜組織の炎症の慢性化が観察された。炎症反応が、関節軟骨に対する力学的負荷に伴う退行変性にたいして増悪因子として働くかを検討するため、卵巣摘除を施行していないマウスに対して関節腔内にモノヨード酢酸(MIA)を注射した後に、強制走行を行なったところ、3週間で有意な関節軟骨の退行変性が観察された。以上のことから、変形性膝関節症の初期病変における滑膜炎症と膝関節の力学的負荷、不安定性の重要性が示唆された。
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