研究課題/領域番号 |
26462292
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
松末 吉隆 滋賀医科大学, 医学部, 病院長 (30209548)
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研究分担者 |
今井 晋二 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (90283556)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 再生医学 / 軟骨細胞 / 整形外科 |
研究実績の概要 |
近年、単層培養で増殖させた軟骨細胞を用いて関節軟骨を再生する試みが報告され、非常に注目されました。しかし、その後の追試で培養軟骨をそのまま移植しただけでは、良質の軟骨再生は困難であることが判明しました。そこで自家軟骨細胞をコラーゲン器質内で包埋し、軟骨類似器官を作成し、軟骨欠損部に移植するという手法が開発されました。一部で臨床試験もされていますが、この方法には決定的な問題があります。自家軟骨細胞の採取は正常軟骨組織を犠牲にしなければならず量的な限界があるためです。自家軟骨細胞数を増加させようとして単層培養すると細胞数は増えますが、細胞は脱分化を起こしてしまい、最も大切な軟骨器質産生能を失います。そこで人工の軟骨基質-Scaffold(足場とも言います)-で軟骨細胞を包埋し、これを移植する 3次元培養軟骨移植が試みられました。しかし、人工的scaffoldにはレシピエントとなる関節に異物反応を起こさないこと、自家新生軟骨により損傷が修復された後には吸収され消退することなどが求められますが、これらの諸条件を全て満たすような理想的な人工scaffoldの確立には至っておりません。もしも、採取した軟骨細胞自身に自らが包埋されるほどの十分な軟骨基質を産生させることに成功すれば、人工scaffoldを用いないので、人工的scaffoldの問題は一気に解決されます。我々はscaffold-free constructの作成を目標に研究を進めてきました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々はPrimary culture (passage 0)では軟骨細胞の分裂・増殖能は非常に限られているが、軟骨産生能はよく保たれていることに注目しました。すなわち、500cm2の巨大シャーレにウサギから採取した軟骨細胞を播種します。我々はこれまでの予備実験で、Primary軟骨細胞は分化度が高いので分裂・増殖速度が非常に遅いのですが、巨大シャーレ上の軟骨細胞がconfluentになるまで培養することで成熟軟骨細胞の大量獲得に成功しました。 軟骨細胞は一旦、1.0X106cells/dishで単層培養により2~3週間培養増殖させた後に合成半透膜上に高濃度で細胞を播種して高濃度培養しました。我々の系では条件を変えることにより軟骨類似器官の厚さ、硬さなどの形態を調節可能です。この利点を生かし、軟骨分層欠損への充填に理想的な形態(円筒形)と硬度をもつ軟骨類似器官形成のため、種々の軟骨細胞の濃度(1.0、2.0、 および 4.0×107 cells/cm2)で軟骨片を作成した。2.0×107 cells/cm2が移植手術に最も適した硬度の軟骨片を形成する事ができた。次に実験用ウサギ膝関節軟骨に直径4mmの軟骨部分欠損を作成した。各週齢5匹ずつ行った。ここに、scaffold-free再生軟骨constructを移植し、軟骨修復能についての評価を行った。軟骨類似器官移植後2週、4週、および8週での評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
scaffold-free再生軟骨constructの移植の問題点としては、ウサギが運動する際に移植軟骨類似器官が脱落してしまう可能性が考えられたが、軟骨constructはプレスフィットによる固定を予定で、あまり脱落しなかった。しかし、組織学的にrecipient組織との境界に介在する軟骨以外の組織があった。今後は実験用ウサギ膝関節軟骨部分欠損の修復状態について代表的な軟骨器質であるアグリカンとII型コラーゲンとし、これらの経時発現量を比較する予定である。アグリカン、II型コラーゲンのmRNAの発現はRT-PCR法による評価を、タンパクの発現はアグリカン、II型コラーゲンに対する免疫組織化学染色法とトルイジン・ブルーによるメタクロマジーの発現とによって行う予定である。移植されたscaffold-free再生軟骨が基質を産生し、recipient組織と融合しようとしているのかを評価する。
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