本研究ではこれまでにDAP12とその会合受容体であるSiglec-15のキメラタンパク質である改良型SSDKAが、DAP12との結合を介さずに、Siglec-15遺伝子欠損マウス由来破骨細胞の骨吸収活性を回復させることを培養系を用いて確認している。本知見は改良型SSDKAが一分子でSiglec-15-DAP12複合体を模倣しうること、少なくとも細胞培養系ではSiglec-15がDAP12のITAMを介して機能すること、を強く示している。本研究では独自にSiglec-15遺伝子欠損マウスおよび破骨細胞特異的に改良型SSDKAを発現するトランスジェニックマウスを樹立した。破骨細胞特異的に発現する改良型SSDKAがSiglec-15遺伝子欠損マウスの大理石骨病を回復し得た場合、Siglec-15が破骨細胞においてDAP12会合受容体として機能することを示し得る。今年度はこれら2系統の遺伝子改変マウスを交配し、統計解析に十分な数の各種遺伝子型メスマウスから脛骨および大腿骨を採取した。 われわれはRNA干渉法により、ST6GALNAcX(仮称)が成熟破骨細胞形成に関わる可能性を示唆するデータを得ている。しかしRNA干渉法ではmRNA発現レベルを減少させることは可能であるが完全に消失させることは難しい。そこで本知見をさらに確認するためにゲノム編集法の利用を試みた。本年度は前年度にクローン化したRAW264細胞を材料として、ゲノム編集ベクターを導入したST6GALNAcX遺伝子欠損クローンを20クローン樹立することに成功した。
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