研究実績の概要 |
これまで、ウサギ軟骨を用いた軟骨前駆細胞CPCの単離を行い軟骨分化能、脂肪分化能、骨化を探索中するとともに、ヒト変形性関節症OA軟骨を用いた軟骨前駆細胞の単離とその形質の探索およびOA軟骨(細胞)に対するCPCの影響を研究した。当大学医の倫理委員会の承認の下、変形性膝関節症あるいは変形性股関節症に対して人工膝関節全置換術および人工関節全置換術を受けた患者から切除した関節から軟骨を採取し、軟骨前駆細胞CPCを分離し、その形質をFACSによって探索し、CD29, CD44, CD49e, CD90, CD105, CD166, Stro1では陰性で、CD90 (Thy1)だけはほんのわずかに陽性細胞が検出できた。この陽性細胞の増殖能は低かった。このため、若年者の骨髄から軟骨前駆細胞CPCを作製し、これをウサギ変形性膝関節症モデルに関節内注射して、関節症性変化の評価、組織学的評価を行った。本法は免疫抑制を行うことなく関節腔内投与を行い経過観察しているが、投与後1ヵ月を経過しても明らかな有害事象はなかった。軟骨損傷に対するCPCの関節腔内注射による治療は従来報告されている間葉系幹細胞よりも高い効果を示すと推察される。CPCのOAに関する研究は少なく、これを分化・増殖させたCPCを関節内注射させたり、これによって作製した培養軟骨によって変性したOA軟骨を修復・再生させたりする試みもこれまでない。CPCをOA発症と治療の新しいrole playerとすることで、分解・変性抑制薬を用いる消極的治療から修復・再生への積極的治療に転換できる可能性がある。また、細胞治療は注射などの保存的治療ができ、手術的治療を回避でき医療費・経済損失の低減にも寄与でき、本法は本法を開発する臨床的意義はきわめて大きいと考える。さらに有効性と安全性を検証していく予定である。
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