研究実績の概要 |
ヒト軟骨細胞(Lonza社)に対し, 細胞伸展装置STB-140(STREX社製)を用いた伸展刺激(0.5Hz, 10%伸張, 30分、0.104Hz, 5%伸張, 30分)、あるいはHDAC阻害剤を加えた後, 24時間でmiRNAを回収し、マイクロアレイを使用して網羅的なmiRNA発現の解析を行った。コントロールと0.104Hz, 5%伸張, 30分の伸張刺激を与えた軟骨細胞では、miRNAの発現が2倍以上差を認めたものは約60種類、また伸張刺激を与えた群にMS-275(HDACクラスⅠ阻害剤)を添加したものでも約80種類のmiRNAの変動を確認した。これらの結果の解析により, メカニカルストレスで有意に発現が変動した miR-29bのtarget geneの一つであるADAM12に着目した。強刺激群(0.5Hz, 10%伸張, 30分)においてADAM12-Lの発現が亢進し, miR-29bの発現は低下した。さらにATDC5細胞の軟骨分化過程において, X型コラーゲンの発現に先立ってADAM12の発現の亢進を認めた。次いで本学倫理委員会の承認を得て, 人工関節置換術時に採取したOA軟骨組織および骨棘組織を使用し, ADAM12のOA組織における局在の検討を行なった。抗ヒトADAM12抗体を用いた免疫染色の結果, 変性軟骨組織においてはクラスターを形成したOA軟骨細胞に, また骨棘組織においては増殖軟骨細胞層と肥大軟骨細胞層でADAM12陽性細胞が有意に増加していた。これらの結果はADAM12が内軟骨性骨化である骨棘形成過程において軟骨細胞の増殖と肥大化に関与していることを示唆していた。さらに軟骨分化過程におけるADAM12の機能を検証するため, CRISPER/Cas-9システムによる遺伝子改変技術を用いてADAM12遺伝子をノックアウトしたATDC5細胞を作成した。
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