研究課題/領域番号 |
26462306
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
小宮 節郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30178371)
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研究分担者 |
瀬戸口 啓夫 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任准教授 (40423727)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人工関節ルーズニング / オートファジー / 人工関節周囲感染 |
研究実績の概要 |
人工関節置換術後に生じるルーズニングは人工関節に使用している材料であるポリエチレンや金属などの摩耗粉を、マクロファージが異物として認識して貪食することがきっかけで生じるとされている。活性化したマクロファージの放出するサイトカインが過剰に破骨細胞を分化・刺激して、骨融解・ルーズニングが発生する。人工関節のルーズニングにはaseptic looseningと感染に伴うseptic looseningが存在するが両者の鑑別は困難なこともある。そのため両方をターゲットとして研究を展開した。まずaseptic looseningにおけるオートファジーの機能解析をin vitroで検討した。マクロファージの細胞株にポリエチレンの粒子を添加するとある種のサイトカインの発現が上昇することがしめされた。このサイトカインの破骨細胞や骨芽細胞に対する作用を検討している。一方で人工骨頭術後早期にゆるみを生じた症例の術中組織を病理学的に検討した。人工骨頭周囲組織の400倍鏡検で複数視野に一視野中好中球が5個以上存在した症例を好中球陽性群(感染)として評価した。また摩耗粉や貪食細胞の浸潤がある例はaseptic looseningが原因とした。病理学的には11例が好中球陽性で感染と評価された。摩耗粉や貪食細胞は好中球陰性群では全例に見られたが、好中球陽性群では一例も見られなかった。Kaplan-Meir analysis, log-rank testで好中球陽性群は好中球陰性群と比較して有意にprosthesisの生存期間が短かった。ROC解析を行うとcut-off値は好中球陽性群では生存期間3270日以下、CRP 0.43mg/dL以上、JOA score 56点以下であった。好中球陽性群にはCRP値1mg/dL未満でその他の感染所見を示さない4症例でも同様の結果だった。術後9年未満で明らかな他の誘因なく、寛骨臼内migrationを生じる症例では感染の評価が必要であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
aseptic looseningにおけるオートファジーの機能解析をin vitroで検討した。マクロファージの細胞株にポリエチレンの粒子を添加するとある種のサイトカインの発現が上昇することがしめされた。このサイトカインの破骨細胞や骨芽細胞に対する作用を検討している。一方で派生研究として術後9年未満で明らかな他の誘因なく、寛骨臼内migrationを生じる症例では感染の評価が必要であることが示された。これらの研究は第一報、第二報として英文誌にすでに報告しており、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
aseptic looseningにおけるオートファジーの機能解析をin vitroでさらに検討する。マクロファージの細胞株にポリエチレンの粒子を添加すると発現上昇するサイトカインの破骨細胞や骨芽細胞に対する作用を検討する。一方で派生研究として人工関節周囲感染に伴うルーズニングや感染制御の研究を臨床検体などを用いて病理学的・分子生物学的に検討する。
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