研究課題/領域番号 |
26462307
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
石堂 康弘 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任准教授 (10300740)
|
研究分担者 |
前田 真吾 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 特任准教授 (60353463)
小宮 節郎 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 教授 (30178371)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | TGF-βシグナル / 軟骨細胞分化 / c-Myc / MYCT1 |
研究実績の概要 |
TGF-βシグナルは、軟骨細胞分化の早期は促進し後期は抑制するが、その分子メカニズムの一部はSnoNやSmpd3がmediatorとして担っていることを我々は明らかにしてきた。一方、c-Mycは癌原遺伝子の一つであるが、軟骨細胞分化に与える影響も報告されており、促進とも抑制とも言われていてcontroversialである。本研究は、TGF-βシグナルの標的遺伝子を探す過程でc-Mycの標的遺伝子MYCT1を同定した事に始まり、これらの2つのシグナル経路の接点としてのMyct1の軟骨細胞における発現動態と機能を探る事を目的としている。前年度の研究の結果、軟骨細胞、軟骨肉腫細胞株において、TGF-βシグナル刺激に反応してMYCT1遺伝子の発現誘導が増える事を確認し、またc-MYCノックダウン実験でMYCT1遺伝子の発現減少を検出していたので、TGF-βシグナルとc-MYCシグナルの両者がMYCT1遺伝子の誘導に必須であると予想していた。 本年度は、MYCT1が実際に軟骨細胞分化に与える影響を調べる為にsiRNAによるノックダウンを行った。ところが、十分なノックダウンが得られたにもかかわらず、軟骨細胞分化早期マーカー(Col2a1やアグリカン)や後期マーカー(Col10a1)共に、全く変化がなかった。したがって、MYCT1は分化マーカーとしての意義は有り得るが、機能的には軟骨細胞分化には重要でないか、もしくはその機能をcompensateする他の遺伝子が存在する事が示唆された。 そこで、TGF-βシグナルとc-Mycの両者により発現が影響を受ける他の遺伝子を検索したところ、TGF-βシグナルにより強力に発現が抑制される事を先行研究で確認していたPEG10遺伝子が、c-Mycの標的遺伝子でもあるという報告(Li et al, Cancer Res, 66,665-672, 2006)に着目し、そのsiRNAによる軟骨細胞分化解析にも着手し、実際に軟骨細胞分化への影響を示すデータを得つつある。PEG10発現ベクターの構築も終了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通りに、MYCT1の発現解析、siRNAによる機能解析に着手し、結果を出している。しかしながら、MYCT1が軟骨細胞分化にはあまり関与していない事を示唆する結果であった為、これ以上の追求よりは、他のTGF-βシグナルとc-Mycの接点となりうる遺伝子の検索に軌道修正し、PEG10を新たな候補遺伝子として、siRNAによる機能解析から進めている。
|
今後の研究の推進方策 |
PEG10のノックダウン、過剰発現による軟骨細胞分化への影響を、マーカーのmRNA発現やウエスタンブロット、及び基質染色で検証し、MYCT1と発現を影響し合う可能性も検討する。マウス軟骨におけるPEG10の免疫染色を行い、in vivoにおける役割のstageを予測する。また、PEG10とTGF-βシグナル、PEG10とc-Myc、それぞれの協調効果やgenetic interactionをダブルノックダウンや、共発現実験などで検証する。またTGF-βシグナルやc-Mycはがん関連シグナル分子であり、PEG10も各種がんにおける高発現や促進機能を指摘されているので、軟骨細胞へのがん化機能はないかも、細胞増殖や、細胞運動能、細胞浸潤能などを指標に評価していく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度は、MYCT1が実際に軟骨細胞分化に与える影響を調べる為にsiRNAによるノックダウンを行ったが、十分なノックダウンが得られたにもかかわらず、軟骨細胞分化に、全く変化がなかった。したがって、MYCT1は分化マーカーとしての意義は有り得るが、機能的には軟骨細胞分化には重要でないか、もしくはその機能をcompensateする他の遺伝子が存在する事が示唆された。そこで、TGF-βシグナルにより強力に発現が抑制される事を先行研究で確認していたPEG10遺伝子が、c-Mycの標的遺伝子でもあるという報告に着目し、そのsiRNAによる軟骨細胞分化解析にも着手した。すなわち、若干の研究方針変更に伴い、消耗品の品目と使用量に変更が生じた為。
|
次年度使用額の使用計画 |
最終年度は、PEG10遺伝子の機能解析を中心に行う為に、使用消耗品を厳選して、かつ適切な量を使用する予定である。
|