研究課題/領域番号 |
26462309
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
永谷 祐子 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90291583)
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研究分担者 |
大塚 隆信 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10185316)
浅井 清文 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70212462)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 関節リウマチ / 滑膜細胞 / グリオスタチン / チミジンホスフォリアーゼ / TNF alfa / MMP-3 |
研究実績の概要 |
関節リウマチの病態にグリオスタチンが密接に関与していることを我々は初めて見いだし報告している。これまでの基礎研究成果に基づき、1. 関節リウマチにおける関節破壊へのグリオスタチンの関与を解明すること、2. GLS遺伝子の発現から関節炎惹起活性の発現に至る諸相を阻害することにより、関節リウマチの病勢を緩和する方法を確立することを最終目標としている。本研究では、関節リウマチ滑膜炎寛解のためグリオスタチンが治療のターゲットとなりえることを明らかにすることを目標とした。 本年度は、人工膝関節置換術の際に患者の承諾を得て採取した滑膜を培養し、形態学的に均一な線維芽細胞様滑膜培養細胞(FLSs)を用いた実験を施行した。FLSsにおいてグリオスタチン産生は、TNF-αによって誘導されたことよりNF-κBシグナル伝達経路の関与が示唆された。NF-κB阻害剤(dexamethasone、aspirin、dehydroxymethylepoxyquinomicinなど)を用いて、グリオスタチン産生が抑制されるかを検討した。さらにグリオスタチンにはautocrine作用があり、これによりRA病態の慢性化、炎症の持続性が生じると考えられる。このautocrine作用はcalcineurin inhibitorであるFK506によって抑制されることを確認した。 関節リウマチ患者血清中のグリオスタチン濃度を測定した。TNF阻害薬治療経過において既存の病勢マーカーと比較してその推移を観察している。血清中のグリオスタチン濃度は滑膜炎のvolumeと相関するのではないかと示唆され、さらに症例を集積中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
交付申請書にてH26年度では、1. 組換え型グリオスタチンの精製 2. 滑膜培養細胞の継代培養 3.滑膜細胞でのグリオスタチン産生におけるNF-κBシグナル伝達経路の検討の3点を目標とした。1.では、グリオスタチン cDNAを組み込んだ発現ベクター(pET-His)を E. Coliにトランスフェクトし、グリオスタチン組換体を調製した。精製した組換体はAffi-Prep Polymyxin Bにてlipopolysaccharideを除去した。本研究に必要な充分量のグリオスタチンを精製することができた。2.では、人工膝関節置換術のさいに患者の承諾を得て採取した滑膜を培養し、3代から6代継代した。この滑膜培養細胞を安定的に維持し、in vitroの実験系に供することができた。 3.では、滑膜培養細胞でのグリオスタチン産生はTNF-αによって誘導されることからNF- κBシグナル伝達経路の関与が示唆された。そこでNF-κB阻害剤(dexamethasone、aspirinなど)を用いた実験系を構築した。グリオスタチン産生は抑制されたが、さらに詳細に検討するためNF-κB阻害剤の選択を再考すべきと考えた。Cycloheximide前処理をした後TNF-α刺激することによりグリオスタチン mRNAの誘導が完全に押さえられたことから、TNF-αによるグリオスタチン蛋白の誘導には何らかのタンパク質を介していると考えられたが今年度そのタンパク質を同定することはできなかった。
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今後の研究の推進方策 |
グリオスタチンのプロモーターを組み込んだluciferase assay vectorを作製し、炎症性サイトカイン刺激によるグリオスタチン発現の転写調節活性部位を特定する。予備実験ではSp-1結合部位が重要であることが示唆されている。Sp-1阻害剤の一つであるmithramycinによりluciferase活性が高度に減弱することが確認できている(Ikuta K, et al. Arthritis Res Ther 2012; 14:R87)。より効率よくSp-1を阻害する薬剤をこの系を用いて検索する。 滑膜細胞ではグリオスタチンはautocrine 作用を有する。グリオスタチンautocrine作用の連鎖を断ち切る因子を明らかにすることで、生物学的製剤不応症例の病態抑制に迫れる可能性がある。 本邦でも関節リウマチの治療にJAK阻害剤が用いられるようになったが、滑膜細胞に対する作用機序はいまだ明らかにされていない。グリオスタチンの産生抑制にJAK阻害剤が関与するか否かをRT-PCRにて検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
26年度の研究実績を英語論文で発表予定であったが、論文作成が遅れ、次年度に持ち越した。そのため英文校正費と投稿費用をそれぞれ10万円と8万円と想定し次年度に持ち越した。また各種シグナル伝達阻害剤の購入として約20万円を想定していたが、一部実験協力者からの供与があったため次年度に持ち越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額314,979円については、平成27年6月ローマにおける国際学会(Annual European Congress of Rheumatology, 2015.6.10-13)で採択されたため、旅費として使用する予定である。演題名は、The inhibitory effect of synthetic disease-modifying anti-rheumatic drugs and steroids on gliostatin/platelet-derived endothelial cell growth factor production in human fibroblast-like synoviocytes。発表者はKawaguchi Y, Waguri-Nagaya Y, Tatematsu N, Kobayashi M, Goto H, Nozaki M, Ikuta K, Aoyama M, Asai K, Otsuka T.である。
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