研究課題/領域番号 |
26462311
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
生駒 和也 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (50516044)
|
研究分担者 |
徳永 大作 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (90343409)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 関節軟骨 / 造影剤 / MRI |
研究実績の概要 |
われわれはこれまでに陰性-陽性多剤配合剤であるMinericを造影剤として利用した関節軟骨直接二重造影法を確立した.本研究ではこの方法を応用して,家兎膝OAモデルの変性関節軟骨における造影効果を評価することを目的とした. 日本白色家兎4羽の前十字靭帯と内側半月板前節を切除し,膝OAモデルを作成した.動物用横置き型7.04TMRI装置を用いて,術後2,6,8週に膝関節のMRIを撮像した.右膝関節矢状断のプロトン密度強調画像とマルチスピンエコー法を用いたスピン・エコー画像を撮像し,スピン・エコー画像からT2計算画像を作成した.MR画像を撮像した後にMineric® (ニプロ株式会 社,大阪,日本)を右膝関節内に1.0ml注入した.注入後に同様の条件下にMR画像を撮像した.大腿骨の内側顆と外側顆に関心領域を設定し,造影剤注入 前後のT2値を測定した.また,8週後に右膝関節を摘出し,HE染色とサフラニンO染色を行い,組織学的評価を行った.造影前, 内側顆のT2値は33.27 ms(2週後),33.04 ms(6週後),34.26ms(8週後)であり,外側顆は33.82 ms(2週後),35.48 ms(6週後), 34.40 ms(8週後)であった.造影後,内側顆のT2値は33.30 ms(2週後),36.32 ms(6週後), 38.21 ms(8週後)であり,外側顆は35.33 ms(2週後),35.56 ms(6週後), 38.07 ms(8週後)であった.造影によりT2値は延長し,術後も経時的に延長した.また,組織学的にもMR画像上に設定した関心領域で関節軟骨が変性していることを確認した. OAモデルにおける変性関節軟骨では軟骨基質であるコラーゲン線維の断片化およびプロテオグリカンの減少により陰性帯電が減少し,造影剤による造影効果が増強したと考える.この結果から,本法を用いて関節軟骨の変性初期を低侵襲に評価できる可能性があることが分かった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在造影剤を用いた動物実験は進んでおり、実際に造影効果も確認し、初期変性関節軟骨の造影も確認している。今後造影剤による関節軟骨の変性、組織学的な裏付け実験を進めている過程であり、おおむね順調に推移していると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
現存の陽性造影剤(Gd-DTPA,Gd-DTPA-BMA,Gd(HP-DO3A),Gd-EOB-DTPA,クエン酸鉄アンモニウム,塩化マンガン,硫酸銅など)と陰性造影剤(フェルモキシデス,SHU555A,塩化鉄(Ⅲ)など)を配合し,それをDCA として用いてMRI造影効果を測定する.各造影剤の軟骨内部への浸透しやすさ,2剤の組合せについて検討する.各造影剤の軟骨への浸透能等濃度の造影剤について,電荷の正負および電荷量,分子量の大小で軟骨への浸透能変化を検証する. 2剤の組合せを,正に荷電した陽性造影剤-負に荷電した陰性造影剤,正に荷電した陽性造影剤-正に荷電した陰性造影剤,負に荷電した陽性造影剤-負に荷電した陰性造影剤,負に荷電した陽性造影剤-正に荷電した陰性造影剤の4通りに関して検証する.有望な造影剤と判断された造影剤の組合せを用いin vitro研究としてウシ膝蓋骨関節軟骨を,2剤組み合わせの造影剤に一定時間軟骨を浸透させ,その造影効果を検証する.Gd-DTPAと比較し,コントロールは生理食塩水とする.消化酵素パパインを用いてPGおよびコラーゲンを変性させ,組織学的な変性所見を確認した後,同様に微量元素配合剤のT1短縮およびT2短縮効果を検証する. in vivo研究としてウサギを全身麻酔し,両膝関節内注射で造影剤を局所投与し,軟骨造影効果を検証する.撮像後,全身状態を経時的に観察することで副作用の有無を調べる.また投与直後,28日後に再び撮像し,造影剤の減少過程を追跡した後,膝関節軟骨の組織学的検査を行う.膝関節初期変性モデルを作成し,同様の実験を行う.組織学的に変性所見を確認する.帯電荷電によって軟骨への造影剤浸透が変化するかを比較検討する.組織学的解析は,MR画像と同様の冠状断像で半薄切片を作成し,光学顕微鏡で観察する.HE,サフラニンO,鉄および銅染色を施行する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
予定していた動物実験の費用(組織作成費用)が当該年度を超えて次年度に変更したため繰り越した。
|
次年度使用額の使用計画 |
2015年4月に組織学的検索を行う予定であり、この費目として使用する予定である。
|