研究課題/領域番号 |
26462318
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
依田 昌樹 慶應義塾大学, 医学部, 助教 (30464994)
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研究分担者 |
堀内 圭輔 慶應義塾大学, 医学部, 特任准教授 (30327564)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ADAM10 / 骨・軟骨代謝 / Notchシグナル / シェディング / 細胞分化 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き、平成27年度もII型コラーゲンプロモーター制御下でAdam10を欠損させたマウスモデル(A10/Col2マウス)の解析を行った。膝軟骨のマイクロアレイ解析の結果から、野生型とA10/Col2マウス間で変動の大きい遺伝子群の発現を定量的PCR法を用いて解析した。その中で有意に差があるものに関してin situハイブリダイゼーション法と免疫染色法を用いて遺伝子発現およびタンパク質発現の局在性を現在精査しているところである。 また、Osterix(Sp7)プロモーター制御下でAdam10を欠損させたマウスモデル(A10/sp7)の解析も並行して行った。大変興味深いことにA10/Sp7マウスの大きな表現系の一つとして、8週齢以降顕著な皮膚疾患を呈することが示された。一般的に成獣においてSp7は骨芽細胞特異的に発現している転写因子であることが示されているが、胎生期および出産後の新仔においては一部の間葉系細胞に発現していることが示されている。そこで、A10/Sp7マウスで見られた表現型が骨芽細胞特異的にAdam10を欠損した結果生じたものかを検討した。A10/Sp7マウスはTet-offによりCre遺伝子発現がコントロールできる(ドキシサイクリン非存在下で遺伝子発現)ことから、成獣(8週齢)の段階でAdam10遺伝子を欠損させたマウスを観察したところ、やはり重篤は皮膚疾患を呈することが明らかとなった。現在、この表現型に関して関与が予測される内因性物質の同定を行っている。さらに8週齢の骨形態計測の結果から骨量低下および骨形成速度の低下が示唆された。この表現型が骨芽細胞におけるADAM10欠損によるものなのか、重篤な皮膚疾患に起因するものかを現在検討をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成27年度は、A10/Col2マウスモデルに関する解析に関してはマイクロアレイ解析からいくつかの遺伝子を選択し発現解析したことはひとまずの前進と考えられた。しかしながら、局在性に関する解析が遅れており来年度おける急務な重要課題を残した。 また、今年度はA10/Sp7マウスモデルの解析を進めており、A10/Sp7マウスでは骨量低下および骨形成速度の低下が示唆される結果を得た。さらに、成獣では骨芽細胞にのみ発現するとされる転写因子Sp7のプロモーター下でAdam10を欠損させたにもかかわらず皮膚において重篤な疾患が観察されるという大変興味深い結果を得ることができた。近年、骨組織と他組織間における恒常性維持機構のクロストークが取りざたされている。骨芽細胞でのAdam10欠損が他組織に与える影響を精査することは大変興味深いことである。異常な骨芽細胞分化が成体の恒常性維持に関与している可能性を示せたこと、さらにAdam10がその分化機構に関与している可能性を示せたことは有益であると考えている。 次年度以降、その制御機構の解明のため研究計画に基づいて明らかにしていく必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、A10/Col2マウスモデルに関してはマイクロアレイ解析により得られた結果から特定の遺伝子発現の局在性をin situハイブリダイゼーション法を用い、さらにタンパク質発現を免疫染色法を用いて解析する。また、骨形態計測の結果を精査し軟骨組織周辺の骨芽細胞および破骨細胞の動態を評価することで成長障害の要因を検証する。 A10/Sp7マウスモデルに関しては、骨形成の評価をレントゲン解析、マイクロCT解析、病理組織観察によって行う。さらに骨形態計測の個体数を増やし、骨形成異常を有意な差をもって示すことができるようにする。また、A10/Sp7マウスおよび野生型マウスから採取した骨芽細胞を用いた分化誘導試験および機能試験を行い、Adam10が骨芽細胞へ及ぼす影響に関して検証する。また、A10/Sp7マウスが示す皮膚疾患についても原因となる液性因子の同定、さらにはその液性因子と骨芽細胞との関係を遺伝子発現およびタンパク質発現解析から精査する。 さらに、本年度はそれぞれ得られた結果について精査し論文作成・投稿の予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
未使用額の発生は、予定していた学術集会への不参加、および効率的に物品購入を行った結果である。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度は、cKOマウスから採取した初代培養細胞を使用したin vitroの実験を中心に解析予定であるため、培養に必要な器具・試薬類および解析に必要な酵素・抗体の購入を予定している。さらに、並行して行っている組織学的解析に必要である蛍光標識抗体および組織切片作製のための消耗品費を計上した。また、研究成果発表のための学会参加費および論文作成・投稿に必要な経費もあわせて計上した。 平成27年度の未使用額は平成28年度の消耗品費にあてる予定である。
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