研究課題/領域番号 |
26462319
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
野尻 英俊 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10317456)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軟骨 / 酸化ストレス / スーパーオキシド / 変形性関節症 |
研究実績の概要 |
我々は軟骨細胞における内在性の抗酸化酵素SOD2の役割を理解するために軟骨特異的プロモーターCreマウス(Col2a1-Cre)とSod2 floxマウスの交配から軟骨特異的SOD2欠損マウス(Col2a1-Cre, Sod2 flox/floxマウス)を作製した。マウスの膝軟骨から抽出したDNA、RNA及び蛋白から軟骨特異的にSOD2の完全な欠損が確認できた。膝関節の軟骨細胞でROS (reactive oxygen species; 活性酸素種)の過剰な発生を認め、軟骨特異的なSOD2の欠損とそれに伴うスーパーオキシド過剰発生を誘導することに成功した。 次にこのマウス膝軟骨から抽出したmRNAを用いて定量的RT-PCRを行ったところ、軟骨同化マーカーの発現低下、軟骨異化マーカーの発現上昇が明らかとなり、プロテオグリカン産生の低下をきたしていた。さらに関節軟骨へのメカニカルストレス負荷実験として膝関節内側半月板の前方付着部を解離して膝関節の動揺性を引き起こしたところ軟骨特異的SOD2欠損マウス膝で組織学的に軟骨変性が促進していた。さらに12か月齢の加齢マウスの膝において自然発症の変形性関節症変化が確認できた。これらの結果から軟骨細胞におけるSOD2の低下、スーパーオキシドの増加が変形性関節症の発症の原因である可能性が示された。 さらにROSを消去するといわれる抗酸化剤の軟骨保護作用をみるために野生型軟骨細胞にビタミンC(VC)、またはビタミンC誘導体(APPS)を添加した。VC群ではCol2a1, Acanの発現は抑制される一方で、APPS添加群では増加したことから、APPSは軟骨細胞の酸化変性に対し保護的に作用することが明らかになった。APPSはSod2欠損軟骨細胞におけるスーパーオキシド発生量を有意に抑制し、生体においてもAPPSの関節注射により関節軟骨のスーパーオキシド発生量が有意に抑制され、軟骨摩耗を有意に抑制した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究当初の計画通り、軟骨特異的Sod2欠損マウスを作製し、解析を進めた。研究2年間で前述の如く軟骨細胞における過剰なミトコンドリアスーパーオキシドがOAの原因の一つであることを結論付けることができた(Scientific reports 2015)。また、現在ヒト変形性関節症患者の手術時破棄組織から軟骨を採取し、サンプリングも同時に行っている。
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今後の研究の推進方策 |
手術検体の軟骨から抽出したmRNAをサンプルとして、SOD2の遺伝子発現を測定し変性部と非変性部での比較検討を行う。そして先行の外国論文との整合性を検討する。さらにDNAマイクロアレイ法で遺伝子発現プロファイリングを行う。ここから得られた情報より変動する発現分子、クラスターまたは主要な軟骨代謝マーカーを限定し、定量的RT-PCRで発現の再確認を行う。これら変動分子と軟骨変性との関連性を検索すると同時に、軟骨特異的SOD2欠損マウスにて得られた結果と照合し、OAの発症、進行のメカニズム、OAの治療戦略を分子レベルで明らかにする。
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