研究実績の概要 |
我々は軟骨細胞における抗酸化酵素SOD2の生理的役割、スーパーオキシドの病理的役割を理解するために軟骨特異的プロモーターCreマウス(Col2a1-Cre)とSod2 floxマウスの交配から軟骨特異的SOD2欠損マウス(Col2a1-Cre, Sod2 flox/floxマウス)を作製した。これを用いた実験より関節軟骨へのメカニカルストレス誘導下において、また加齢において軟骨細胞におけるSOD2の低下、スーパーオキシドの増加が変形性関節症の発症の原因である可能性が示された(Koike M, Nojiri H, Sci Rep 2015)。 しかし実際のヒト変形性膝関節症(OA)関節軟骨のスーパーオキシド発生量およびSOD活性の動向に関しては報告がない。そこで我々は軟骨におけるスーパーオキシド発生量、SOD活性の挙動を明らかにするために人工膝関節全置換術(TKA)を行ったKL4の患者(OA群)5例5膝と膝前十字靭帯損傷再建手術(ACL再建術)または半月板部分切除術を行ったKL0,1の患者(対照群)5例5膝の関節軟骨および滑膜を採取し、スーパーオキシド特異的蛍光試薬であるDHE染色で蛍光強度を測定した。さらにTKAを行ったKL4の患者(OA群)18例18膝とACL再建術または半月板部分切除術を行ったKL0,1の患者(対照群)9例9膝の関節軟骨および滑膜を採取し、SOD活性を評価した。結果、DHE染色の蛍光強度は対照群に対し、OA群の関節軟骨および滑膜ではいずれも有意に増加していた。関節軟骨におけるSOD活性は対照群に対し、OA群で有意に低下を認めた。また滑膜におけるSOD活性は対照群に対し、OA群で有意に低下を認めた。ヒトOA軟骨および滑膜においてSOD活性の低下およびスーパーオキシドの過剰状態を認め、我々が行ってきたマウスを用いた実験結果と矛盾しない結果であった。
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