研究課題/領域番号 |
26462320
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
高橋 康仁 東京医科大学, 医学部, 助教 (60567668)
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研究分担者 |
宍戸 孝明 東京医科大学, 医学部, 准教授 (70266500)
正岡 利紀 東京医科大学, 医学部, 講師 (70256270)
立岩 俊之 東京医科大学, 医学部, 助教 (00424630)
山本 謙吾 東京医科大学, 医学部, 主任教授 (10246316)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ヒト軟骨 / 細胞外マトリックス / 微細構造 / ラマン分光 |
研究実績の概要 |
本事業では、変形性関節症(OA)の進行に伴うラマンスペクトルの変化を調査し、診断マーカーとなりえる分子構造ブロックの探索を行った。軟骨では細胞外マトリックス(ECM)由来のラマンバンドを、 400-1800cm-1に複数認め各バンド帯を帰属した。近赤外ラマン分光を応用した人体組織分析の殆どが、ホルマリン固定後に実施されているのが現況であるが、分光計測において組織内のホルマリン浸潤は軟骨スペクトル計測の妨げとなり分析精度低下の要因となる可能性があることを示した。一方、-80℃にて冷凍保存した組織では、1回のリン酸緩衝生理食塩水洗浄で、amide Iバンドを除き、ほぼ完全に固定前の波形まで復元可能であることが明らかとなり、冷凍保存検体にて研究を進めた。我々は、軟骨中Ⅱ型コラーゲンのamide III構造由来のバンド強度比(amide III ratio)に着目し、秩序的なα螺旋構造に対する無秩序なランダムコイル構造の存在比率を評価し、これがOA重症度進行とともに著明に増大する現象を確認した。したがって、OA進行に伴う軟骨変性は、コラーゲン配向のランダム化に深く関与していることが示唆された。この知見を応用し、関節鏡視下の軟骨変性度評価の実施を目指し、ラマンプローブの細径化を試みた。直径3mmの細径ラマンプローブを用いて、脛骨軟骨のスペクトル計測を試み、約60秒で軟骨ECMの明瞭なラマンシグナルを得ることに成功した。今後、さらに検体数を増やし、OAの組織学的病態、ラマンバンド、および分子構造との繋がりに対する理解がより深まれば、光バイオプシーシステムとして迅速術中診断への応用が期待できる。本事業は、ラマン分光を用いた診断ツール開発と実用化の可能性を探る研究であったが、当初の目標通りの成果が得られており、本診断技術の実用化への足がかりとなる非常に有益な成果が得られた。
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