研究課題/領域番号 |
26462322
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研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
中川 晃一 東邦大学, 医学部, 教授 (30400823)
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研究分担者 |
中島 新 東邦大学, 医学部, 准教授 (60583995)
青木 保親 千葉大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70584001)
齊藤 雅彦 東邦大学, 医学部, 助教 (30718747)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 軟骨再生 / 滑膜 / フィブロイン / ヒト |
研究実績の概要 |
平成27年度はフィブロインスポンジ上に播種したヒト滑膜細胞と細切軟骨組織片を試験管内で共培養した場合の軟骨分化促進効果について解析しました。 人工膝関節置換術時に両膝から関節軟骨組織および滑膜組織を採取し、関節軟骨は生理食塩水にて洗浄後、2mm角の大きさに細切しました。滑膜組織は、洗浄し可及的に微細に切断した後、1mg/mlのcollagenaseを用いて37度で30分の酵素処理を行い、滑膜細胞を単離しました。単離した滑膜細胞は、前年度に設定した2 million/mlの細胞密度でフィブロインスポンジ上に播種しました。12時間静置後に播種面が上になるようにTissue culture insert上にスポンジを置き、10% FBSおよび0.2 mM Asc2-P を添加した DMEM/F12 培地にて2日間培養しました。12時間無血清培地とした後、1% FBS, 1% ITS mix, 160μg/ml sodium pyruvate, 100 ng/ml dexamethasone, 0.2 mM Asc2-P , 10ng/ml TGFbeta3を添加した DMEM/F12培地に変更し、さらに2週間の培養を行いました。この際、対照群、200ng/mlのBMP2添加群(BMP群)、BMP添加+軟骨片共培養群(BMP+CA群)の3群に分けて培養を行い軟骨分化の評価を行いました。その結果、SOX9の発現量およびアグリカンの発現量は、対照群と比較してBMP群で優位に増加し、BMP+CA群でさらに増加する傾向を示しました。同様にII型コラーゲン/I型コラーゲン発現比も、対照群と比較してBMP群で優位に増加し、BMP+CA群でさらに増加する傾向を示しました。組織学的所見では、対照群と比較してBMP群およびBMP+CA群で、Alcian blueによる細胞外基質染色性の増強と、S100蛋白陽性細胞数の増加を認めました。組織中のプロテオグリカン含有量も、対照群と比較してBMP群およびBMP+CA群で増加していました。しかし、組織学的所見およびプロテオグリカン含有量は、BMP群とBMP+CA群の間には明らかな差は認められませんでした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、フィブロインスポンジ上に播種したヒト滑膜細胞と細切軟骨組織片を試験管内で共培養した場合の軟骨分化促進効果について確認をすることができました。当初は、対照群、200ng/mlのBMP2添加群(BMP群)、軟骨片共培養群(CA群)、BMP添加+軟骨片共培養群(BMP+CA群)の4群で解析を行いましたが、BMP2非添加の場合は、滑膜細胞の軟骨分化傾向が低いためか、対照群とCA群の間で明らかな差が得られませんでした。そこで、対照群、BMP2添加群(BMP群)、軟骨片共培養群(CA群)、BMP添加+軟骨片共培養群(BMP+CA群)の3群で再度検討を繰り返したところ、SOX9、アグリカンの発現量、II型コラーゲン/I型コラーゲン発現比において、BMP群とBMP+CA群の間で有意な差が認められました。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、分離したヒト滑膜細胞(PKH26で標識)を播種したフィブロインスポンジと軟骨片を含む移植用インプラントを作製し、ヌードマウス(Athymic mice, nu/nu)の皮下に移植する計画となっています。実験群は、フィブロインスポンジのみの群、滑膜細胞播種群、滑膜細胞播種および細切軟骨片含有群、滑膜細胞播種およびfreeze & sawを行った細切軟骨片を含有群の4群とします。移植後2週、4週、8週で摘出し、組織学的、生化学的評価を行って、移植滑膜細胞の軟骨分化が細切軟骨片との共存により促進されることを証明する予定です。またフィブロインスポンジ内のみでなく、その周囲組織にも滑膜細胞由来の軟骨組織形成が起きている(cell delivery機能)ことを確認したいと考えています。以前ウサギの滑膜細胞を用いて行った同様の実験では、軟骨片との共存による移植滑膜細胞の軟骨分化促進効果が認められました。しかしながら、平成27年度の結果から、若年ウサギの滑膜細胞とは異なり、成人のヒト滑膜細胞は、in vitroではBMP2存在下でないと、フィブロインスポンジ上での十分な軟骨分化が得られないことがわかりました。従って、ヌードマウス皮下への移植する実験系でも、ウサギ細胞を用いた場合のような結果が得られない可能性があります。その場合に対応できるように、並行してin vitroの追加実験を行う予定です。フィブロインスポンジにヒト滑膜細胞を播種した後にBMP2を含有したフィブリンゲルでコーティングしてからin vitroの系で培養する方法を考えています。
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次年度使用額が生じた理由 |
当施設の病理部門の研究者の協力が得られたことから、当初予定していたよりも、組織学的検査用の試薬の使用量が少なかったためです。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の使用計画は、動物実験用消耗品20万円、細胞培養試薬・消耗品15万円、抗体試薬25万円、酵素15万円、分子生物学的解析用試薬25万円、組織染色用試薬・消耗品25万円、実験動物(ヌードマウス)25万円 の予定でしたが、平成27年度以前より繰越になった56万9452円は、元々計画していた動物実験と並行して行うことにした追加のin vitroの実験に、細胞培養試薬・消耗品16万円、ウシ胎児血清25万円、分子生物学的解析用試薬15万円、事務消耗品(ノート、ファイル、組織写真印刷用紙)に9452円の割合で使用する予定です。
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