研究課題
亜鉛の欠乏は骨軟骨代謝に様々な異常をもたらすが、なぜ亜鉛の恒常性破綻がこれらの制御に異常をもたらすのか、その機序は解明されていない。申請者は、亜鉛トランスポーターZIP13が骨軟骨形成に重要であり、その機能喪失が新規疾患(脊椎手掌異形成型エーラス・ダンロス症候群)をもたらすこと、ZIP13はホモ2量体を形成するゴルジ体に局在する亜鉛トランスポーターであることなどを初めとする、ZIP13の生化学的および生理的意義を示した。さらに、当該疾患の患者で同定された変異型ZIP13の特徴を解析し、同変異蛋白質がプロテアソーム系で分解されることを報告した。これらの結果は、当該疾患の発症の分子基盤を示すものであり、骨軟骨を含む運動器機能の機序に新たな理解を与えるものと思われる。一方、我々は亜鉛トランスポーターZIP14が軟骨形成と全身成長、および鉄代謝に関わることを見出している。さらに、ZIP13と分子遺伝学的に最も近縁である亜鉛トランスポーターZIP7を解析した結果、ZIP7も全身成長や結合組織の制御に関与することが判明した。ZIP7, ZIP13, ZIP14ともに骨軟骨形成に重要であることが明らかになったが、興味深いことにその作用機序はいずれも異なっており、亜鉛シグナルの特異性が示唆された。今後、これらの分子をモデルとして運動器の機能制御の解明を進めることにより、亜鉛シグナルがどのように運動器の形成と機能に関わっているのか、その一端が明らかにされるものと思われる。なお、最近の実験からZIP13が骨格筋細胞の分化制御に関わることが判明しつつある(未発表)。哺乳類生物の空間移動に骨格筋は不可欠であり、ホルモン受容および分泌臓器として注目を集めている。骨格筋における亜鉛シグナルの役割解明は、本申請研究から派生した新たなプロジェクトとしてその展開と発展が期待される。
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