研究課題/領域番号 |
26462327
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研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
櫛方 哲也 弘前大学, 医学研究科, 准教授 (80250603)
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研究分担者 |
廣田 和美 弘前大学, 医学研究科, 教授 (20238413)
丹羽 英智 弘前大学, 医学部附属病院, 講師 (20374845)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 麻酔 / 鎮痛 / 睡眠 / オレキシン / MCH / ノルアドレナリン / ERAS |
研究実績の概要 |
オレキシン作動性神経の機能低下が全身麻酔時間、麻酔後の睡眠障害に如何なる影響を及ぼすか検討した。 麻酔時間に関して内因性覚醒物質であるオレキシン作動性神経活性の低下した遺伝子改変ラット(OXTGラット)ではケタミン(100mg/kg)の麻酔時間が延長すると予想されたが、実際の麻酔時間はWTラットに比較して短縮した。この一見矛盾する結果の一因として、脳内ノルアドレナリン(NA)の含量がOXTGラットで減少していることが考えられた。何故ならケタミンの麻酔時間は選択的に中枢のノルアドレナリン作動性神経を破壊したラットで短縮したからである(1)。実際、α2アドレナリン受容体作動薬であるヨヒンビンを投与しNA活性を亢進させるとケタミンの麻酔時間は同一ラットの対照値に比べ有意に延長した。本知見は2017年日本麻酔科学会第65回年次学術集会でポスタ-ディスカッションに採択され発表予定である。 他方、麻酔後の睡眠変化を内因性睡眠関連物質との関連において検討した。即ち、野生種ラットに対し、ケタミン(100mg/kg)またはプロポフォール(80mg/kg)を腹腔内投与、麻酔前後の睡眠の変化を昨年度に引き続き追試した。ケタミン群では麻酔後に睡眠が減少し、翌日以降睡眠が反跳的に増加した。これらの睡眠の変化は麻酔薬によるOXとMCHの脳内の変化と一致していた。プロポフォール群では睡眠が増加した。この知見はJournal of Anesthesiaに採択掲載された(2)。更にOXTGラットでケタミン、プロポフォール麻酔後の睡眠の変化を検討中である。 1.Kushikata T, et al. British journal of anaesthesia. 2011;107:924-9. 2.Kushikata T, et al. Journal of anesthesia. 2016;30:437-43.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
吸入麻酔薬の検討に関しては排気装置を検討中で未完である。In vivo、 in vitro両面からオレキシン欠損ラットの麻酔、鎮痛に関する関与を欠損ラットと対応する野生種において1)正向反射を指標とした麻酔時間。2)Hotplateの潜時の比較。3)オレキシン、ノルアドレナリン含量と麻酔時間及びHotplateの潜時との相関関係。4)OXTGラットにおける脳内ノルアドレナリン活性とケタミン麻酔時間の関連をα2アドレナリン拮抗薬を用いた薬理学的検討。5)野生種で、麻酔後の睡眠変化について代表的な静脈麻酔薬であるケタミン、プロポフォールについて検討を行った。睡眠変化と内因性活性物質であるMelanin-Concentrating HormoneとOXの脳内の各部位(大脳皮質、視床下部、橋、海馬)含量との相関の面から多面的に検討できている。
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今後の研究の推進方策 |
OXTGラット、野生型ラットにおけるケタミン、プロポフォールをはじめとする全身麻酔薬投与後の睡眠変化、行動変化など研究計画に従い、実施予定である。
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