プロポフォール(propofol)麻酔から回復する患者は、二日酔いのような症状はなく、しばしば心地良い(気持ちの良い)気分を感じる。カンナビノイド(cannabinoids)は、同様の効果をもたらすことができる薬理学的物質の一種である。プロポフォールは、マウスの脳において構成的に放出されるカンナビノイド(主にアナンダミド、anandamide)の分解酵素であるするfatty acid amide hydrolase( FAAH)を阻害することが報告されている。この阻害効果の結果として、内在性カンナビノイド(endocannabinoids、エンドカンナビノイド)の脳内濃度が上昇する。本研究では、このエンドカンナビノイド濃度の上昇がプロポフォール麻酔後に見られる陽性気分変化効果の原因であるという仮説を検証することを提案した。この目的のために、試験中に動物に薬物を投与することなく薬物の情動特性の評価を可能にする方法であるConditioned place preference (CPP)test(条件づけ場所嗜好性試験)を採用した。まず、プロポフォールがマウスにおいて条件づけ場所嗜好を確立する能力を確認した。次に、カンナビノイド拮抗薬の、プロポフォールによって誘発される陽性感情状態を妨げる能力を試験した。本研究の結果により、エンドカンナビノイド系はプロポフォール麻酔後に見られる陽性気分変化効果に関与していることが示唆された。
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