研究課題/領域番号 |
26462336
|
研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
小嶋 亜希子 滋賀医科大学, 医学部, 助教 (50447877)
|
研究分担者 |
北川 裕利 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50252391)
松浦 博 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (60238962)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
|
キーワード | 心保護効果 / 吸入麻酔薬 / Ca2+輸送タンパク質 / 細胞内Ca2+過負荷 / 虚血再灌流傷害 / RyR2 |
研究実績の概要 |
我々は、虚血再灌流モデルであるオキシゲンパラドックスやCa2+パラドックスの発生に、心筋リアノジン受容体(RyR2)、store-operated Ca2+ enntry(SOCE)チャネルなどの様々なCa2+輸送タンパク質が密接に関与しており、また吸入麻酔薬セボフルランはこれらのCa2+輸送タンパク質に作用して細胞保護作用をもたらすことを明らかにしてきた。本課題では、これらのCa2+輸送タンパク質がどのように心臓虚血再灌流傷害の発生に関わっているかについて、臓器(心臓)レベルで検討を行い、吸入麻酔薬の虚血心筋に対する保護作用の統合的理解を確立するとともに、臨床に適応できる心筋保護法を確立することを目的とする。 平成28年度は、transverse aortic constriction(TAC)手術によって作製した心肥大モデルマウスの左心室筋細胞を用いて、オキシゲンパラドックス発生メカニズムを検討した。TAC心筋細胞におけるオキシゲンパラドックス(H2O2投与による細胞内Ca2+過負荷を伴う細胞拘縮)の発生率は、TAC手術を行わないShamマウスより単離した左心室筋細胞と比較して、有意に増加した。Sham心筋細胞と比較してTAC心筋細胞では、活性型RyR2の発現が増加していた。また、薬剤により筋小胞体機能を喪失させることで、TAC心筋細胞におけるオキシゲンパラドックスの発生率が減少したことから、TAC心筋においては、RyR2機能の亢進を伴う筋小胞体機能異常により、細胞傷害が発生しやすい状態であることが確認できた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病態心である肥大心においては、虚血再灌流傷害モデルであるオキシゲンパラドックスが、正常心と比較して発生しやすいこと、また、そのメカニズムとして、RyR2機能亢進に伴う筋小胞体機能異常の関与を明らかにした。TAC心筋細胞におけるこのRyR2機能亢進には、種々のCa2+制御タンパク質を修飾するCa2+/カルモデュリンキナーゼII(CaMKII)の関わりが示唆される結果も得られ、現在詳細に検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
病態心である肥大心におけるオキシゲンパラドックス、Ca2+パラドックス発生増加のメカニズム解明に加え、摘出肥大心を用いた虚血再灌流実験を行い、これらの細胞傷害の発生に関与するRyR2、SOCEチャネルの阻害薬による心筋保護効果を検討する。また、病態心における虚血再灌流傷害の発生に対するセボフルランの抑制効果についても、定量的に検討を行い、至適な投与法の構築を目指す予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
請求費用の多くは、一般試薬、Ca2+蛍光指示薬などの購入にあてていたが、これまでに購入あるいは保存していた試薬を用いて実験を行えたため、想定していた金額よりも少なくなった。 また、TAC手術作製に必要なマウス手術用器具も、一部これまでに購入していた器具を用いて行えたため、予定額に至らなかった。
|
次年度使用額の使用計画 |
今年度以降も、心肥大モデルマウスの作製が追加実験でさらに必要となる上、他の病態心である、心不全マウスの作製も行う予定であり、病態心モデルマウスの作製に用いるマウスの匹数が増加することが考えられる。そのため、今後のマウスおよびそれを用いた実験試薬・用具の購入に費用をあてる予定である。
|