研究課題/領域番号 |
26462337
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
山下 敦生 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50379971)
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研究分担者 |
松本 美志也 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60243664)
石田 和慶 山口大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (80314813)
山下 理 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (20610885)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脊髄虚血保護 / 脳・神経 / 大動脈瘤手術 / 側副血行 / 血管新生 |
研究実績の概要 |
平成26年度は、肋間・腰動脈閉塞時の脊髄ならびに脊椎周囲組織の血流変化の確認するためのモデルの作成を行った。 最初に肋間・腰動脈のクリッピング法の確立を目指した。当施設で以前から用いているウサギによる脊髄虚血モデルを応用した。ウサギの左側腹部を切開し、経後腹膜アプローチで腎動脈前後の大動脈を露出した。開創部を少し拡大すると腎動脈の走行とは反対側(背側)に向かう小動脈が存在し、これが肋間または腰動脈であると確認した。創部の大きさやウサギの個体差にもよるが1~3本の小動脈が可視範囲内に確認でき、サージカルクリップを用いて結紮することが可能であった。クリッピングしたのち閉創し、麻酔から覚醒させ対麻痺の確認をしたところ、5羽で施行し対麻痺は生じなかった。従ってこの方法で対麻痺は生じさせず、脊髄血流並びに脊髄周囲血流を減少させる可能性のある脊髄血流減少モデルは確立できた。 次に脊髄並びに脊髄周囲組織の血流変化を測定する方法を検討した。全身麻酔下にウサギの背部を切開し、第6腰椎の椎弓切除を行い、脊髄上と脊椎傍筋組織内にレーザー血流計プローベを留置する方法を考えた。脊椎傍筋組織内に測定プローベを挿入することは、既存の方法である注射針の中にグラスファイバー測定プローベを挿入することで容易であったが、脊髄上に測定プローベを挿入し脊髄血流を測定することは困難を極めた。試行錯誤の上、細く切ったアルミ箔の下面にグラスファイバー測定プローベを接着し、それを椎弓間から慎重に挿入することで測定可能であることを見い出した。これらの測定プローベを抜去したのち閉創し麻酔から覚醒させ、脊髄損傷を生じていないことを確認した。この二つの方法を組み合わせて肋間・腰動脈の結紮並びに大動脈遮断時の脊髄ならびに脊椎周囲組織の血流変化を観測できるモデルが作成できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初上記モデルを完成させ、実際の脊髄や脊髄周囲血流の変化を測定し始めている予定であったが、脊髄血流を測定する方法が困難で、測定できないレーザー血流計を購入するわけにはいかず、複数社にデモンストレーションをお願いし試行錯誤した関係で、時間がかかり予定の段階まで進行しなかった。しかしこの部分はこの研究の非常に重要な部分なので、ここがクリアできたので後は予定通り進行できると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
家兎を用いて、脊髄ならびに脊椎周囲組織の血流変化を確認するため全身麻酔下に背部を切開し、第6腰椎の椎弓切除を行い、脊髄上と脊椎傍筋組織内にレーザー血流計プローベを留置する。その上で脊髄虚血モデルと同様に側腹部から切開し、経後腹膜アプローチで腎動脈前後の大動脈を露出する。背側に向かう肋間・腰動脈も露出出来るので、血圧、体温を一定にして1本または2本の肋間・腰動脈をクリップにて閉塞し、その前後で脊髄と脊椎傍筋組織の血流量の変化を計測する。その後閉創し麻酔から覚醒させ、対麻痺を来していないか確認する。脊髄の血流量が低下する場合や対麻痺を来すような場合は、閉塞する肋間・腰動脈の数を減らして対応する。 次に経時的な血流変化を調べるため、新たに家兎を用いて、肋間・腰動脈閉塞1日後、3日後、5日後、7日後に、全身麻酔下に脊椎周囲組織に針状の血流プローベを穿刺し血流量を測定する。この時、血圧、傍脊柱温をモニタし、一定の範囲内にコントロールする。また血流プローベを同じ部位に穿刺すると創傷治癒や炎症反応により血流量が増加するといけないので少し場所をずらしつつ行う。 上記の変化を組織学的に評価するため、組織標本にて顕微鏡下に血管径を測定したり、血管数を数えたりし観察する。これらの検討は、脊髄虚血の本実験が上手くいかない時を想定し、閉塞させる本数や場所や期間を変えて評価する計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成26年度に購入予定であったレーザー血流計とその測定プローベが、脊髄血流測定方法の確立に手間取ったため平成27年度購入となったため、それに当てていた費用がそのまま次年度へ繰り越しとなりました。
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次年度使用額の使用計画 |
コンピュータベースレーザー血流計一式(FLO-Lab:オメガウェーブ社製)を平成27年度に購入予定です。
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