研究実績の概要 |
【研究の背景】GABAとグリシンは、小胞型GABA/Glycineトランスポーター(VGAT)によって神経細胞小胞内に取り込まれる。我々はVGATが減少したヘテロ接合体マウス(VGAT+/-)で炎症性疼痛が増強することを発見したが(1)、今回、VGAT低下によるセボフルランの鎮痛・鎮静作用への影響を調べた。 【方法】麻酔濃度をモニタしながら、立ち直り反射消失(LORR)、尾ピンチ反応消失(LTWR)、後肢ピンチ反応消失(LHWR)の濃度を、野生型(WT)とヘテロ(12-16週)で比較した(2)。これらは鎮静と鎮痛の指標とされる。ED50は最小2乗法で計算し、結果は中央値[95%信頼区間]で示し、検定にはLitchfieldらの方法(3)を用いた。 【結果】LORRで両群差はなかった(WT = 1.20% [1.16-1.23], n=8; VGAT+/- = 1.17% [1.12-1.21], n=7)。LTWRも両群差はなかった(WT = 1.97% [1.94-2.00], n=10; VGAT+/- = 2.03% [2.00-2.06], n=7)。LHWRも両群差はなかった(WT = 2.69% [2.65-2.74], n=7; VGAT+/- = 2.68% [2.65-2.74], n=8)。 【考察と結論】VGATの発現低下(約50%)は、セボフルランの鎮静・鎮痛効果に影響がなかった。この結果は、VGAT低下で小胞内への抑制伝達物質取り込みが減少した状態でもセボフルランによる抑制系賦活(鎮静・鎮痛作用)は、シナプス後膜の受容体への作用によって可能であることを示唆する。 【文献】1) Mol Pharmacol 2012; 81:610-9, 2) Neuropharmacology 2011; 61:172-80, 3) JPET 1949; 96:99-113
|