研究実績の概要 |
敗血症性脳症(Septic Encephalopathy:SE)の脳障害発症機序は未知で、その標的分子も明らかではない。本研究では、ユビキチンリガーゼ(E3)のシノビオリン(Syvn)に焦点を置き、SEの実態をミトコンドリア‐小胞体(Endoplasmic Reticulum:ER)制御経路を機軸とした情報伝達系との連関解析に展開することを目的した。平成27年度研究計画として、敗血症性脳症誘発時における脳内Syvnを介した脳内代謝経路の網羅的解析をメタボローム解析を用いて行った。第8-10週令のC57B6マウス(体重25-30g)を2群に分けて(SyvncKOマウス群とwild投与群)にて回盲部結紮+2回穿刺による(CLP)誘発敗血症性脳症モデル(SAEモデル)を作製する。モデル作製18時間後(SyvncKOマウス群とwild投与群ともに各群3匹の動物を使用、また、各群のshamとして3匹ずつを使用)に大脳のサンプリングを施行して5% (w/w)マンニトール水溶液10 mLを添加し、縣濁し、メタノール800μLを添加する。さらに、内部標準液550μL添加し30秒間vortexし、2,300xg,4℃ 5 分遠心して遠心上清350μL×2を限外ろ過フィルタにて除たんぱくして9,100 xg,4℃,2~5 時間遠心してpelletを5% (w/w)マンニトール水溶液に縣濁してCE-TOFMSによる代謝活動の網羅的解析を行い、脳内Syvnが脳内代謝経路に及ぼす変動と役割を検討した。 CLPモデルによる敗血姓脳症作製18時間後において分岐鎖アミノ酸, 芳香族アミノ酸の代謝に関与するキヌレン酸の著明な減少とキヌレニンの有意な増加が認められた。キヌレニンは脳の障害性を誘発する可能性がこれまでの実験から示唆されており、今回の結果よりSEの誘発機序としてのキヌレニンが重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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