敗血症とは感染症によって引き起こされる急性の全身性炎症であり、中枢神経に影響を与える。トリプトファンから合成されるアミノ酸のキヌレニンもその因子の一つで、神経障害を引き起こす。今回、我々は、敗血症性脳症誘発機構についてシノビオリンヘテロマウスを用いて敗血症モデルを作製し、脳内シノビオリンと脳内キヌレニンとの関連を検討した。 方法 生後8週の雄性C57BL/6J雄マウスと、同種のシノビオリンヘテロマウスを実験に用いた。盲腸結紮穿刺(cecal ligation and puncture :CLP)による敗血症のモデルマウスを作製した。Wild type(WTC)群(n=3)、Hetero type(HTC)群(n=3)、WTのSham(WTS)群(n=3)、HTのsham(HTS)群の4群に分けた。Sham群は開腹のみ行い閉腹処置とした。すべての群を術後18時間後にsacrificeし、脳を検体として用いメタボローム解析を行った。また、キヌレニンアミノトランスフェラーゼ(KAT)活性も測定した。統計処理はWelchのt-検定を用い、p<0.05を有意差ありとした。 結果 メタボローム解析にてHTC群とWTC群を比較した結果、HTC群のキヌレニン値がWTC群に比べて有意に低下していた。(p<0.05) HTC群、WTS群、HTS群のキヌレニン値についてはそれぞれ有意差を認めなかった。KAT活性はモデル作成18時間後のKAT4の活性が上がっていた。 考察 神経障害に起因するキヌレニンはKATによって代謝されキヌレン酸となる。本研究から、シノビオリンを抑制することでKAT活性が上昇してキヌレニンの代謝を促進したことが推測された。 結語 シノビオリンを抑制し、キヌレニンが減少することで神経障害を抑制し、敗血症性脳症の改善に繋がる可能性がある。
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