研究課題/領域番号 |
26462352
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研究機関 | 山梨大学 |
研究代表者 |
中楯 陽介 山梨大学, 総合研究部, 助教 (50597002)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | インスリン / 陽性変力作用 |
研究実績の概要 |
過去の研究では、インスリンの陽性変力作用の有無に関しては未だ一致した結果が得られていない。本研究では、「インスリンの心機能に及ぼす影響は、用量、グルコース量、時間、心筋の状態によって変化する」という仮説を立て、PI3K/Akt経路の面から検証することを目的とした。 本年度は、正常心筋のおけるインスリンの陽性変力作用についてPI3K/Akt経路の面から検討した。心臓灌流用システムを用いて、ラットから摘出した心臓に大動脈・肺静脈・肺動脈カニュレーションを行いLangendorff法にて灌流を開始する。肺静脈から左心室内にバルーンカテーテルを挿入して左心室圧(LVP)を測定した。LVPから左室dP/dt maxを求めて、心収縮能の指標とした。肺動脈から流出する冠灌流液を経時的に採取して冠流量とした。灌流終了時に心筋を凍結乾燥して、心筋内のpAkt濃度をRat-ELISAキットを用いて測定した。上記のラット摘出心臓モデルにおいて、正常ラットの心筋におけるインスリンの心機能に及ぼす影響を対照群との間で比較検討した。 実験の結果、高用量インスリンを投与すると心機能は有意に上昇した。また、心筋内pAkt濃度はインスリン投与により有意に上昇した。この結果から、正常心筋において高用量インスリンは陽性変力作用を有することが示された。本研究により、心臓外科手術や心不全患者の麻酔においてインスリンを使用する新たな根拠が得られた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、高用量インスリンの心筋に対する陽性変力作用を有することが示された。また、その作用機序に関してもPI3K/Akt経路を介していることを示唆するデータが得られ、初年度の研究としてはおおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、高用量インスリンの心筋に対する陽性変力作用について、PI3K/Akt経路の阻害薬であるWartmanninを用いることで更に機序を解明する。また、インスリンの濃度を変えて、経時的な変化についても検討を加える予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラットから心臓を摘出して、大動脈・肺動脈にカニュレーションを行いLangendorff法による摘出心臓標本を用いて研究を行ったが、初年度は安定した実験結果が得られるまでに予想以上の期間が必要になり、Rat ELISAキットや薬剤などの物品購入が遅れ繰越金が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、Rat ELISAキットに関しては、測定値の信頼度を上げるために各検体をトリプルで測定する予定で、5プレート(96 well/プレート)を購入する予定である。過去の摘出心臓標本を用いた研究の経験から、その他の消耗品として、実験動物、灌流用薬剤、測定用薬剤、記録用紙、ピペットチップを該当分購入する。また、実験結果からのデータ分析、学会発表、論文作成のためのパソコンとソフトを購入する。
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