研究課題/領域番号 |
26462355
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
長瀬 清 岐阜大学, 医学部附属病院, 准教授 (90345786)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 周術期 / ビッグデータ / 医療の質 / せん妄 / 体温 / 日常生活自立度 / 摂食開始 / 手術 |
研究実績の概要 |
研究方法はすべて倫理審査委員会で承認された「手術医療の質向上、効率化・標準化の推進、透明性の確保を目指した疫学研究」に則っている。 まず、過去10年間に行われたすべての手術患者の患者属性、患者背景、手術情報、麻酔情報、看護情報、薬剤情報、周術期生体監視情報などを一元集約したデータベースを構築した。本研究はこのビッグデータを活用したデータベース解析が特徴であるため、この構築に注力した。次にこのデータベースから様々な知見を現在までに得ている。 1.手術患者の術後発熱時期と在院中の食事と日常生活自立度にかかわるアウトカムとの関係を明らかにした。たとえば、術後体温上昇が、手術患者における医療の質に関する予後としての摂食開始時期や日常生活自立度の回復過程に大きな影響をおよぼすことが判明した。この術後発熱の影響は、全身状態など術前評価や年齢などの患者背景だけでなく、手術時間などの術中の手術や麻酔による影響を遙かに凌駕するほど大きな影響があることが判明した。従来、手術患者管理は術前評価や術中管理が重要視されていたが、術後管理はそれ以上に非常に重要な条件であった。つまり、手術患者の術後予後を大きく改善させるためには、術前や術中管理だけでなく、術後早期からより精緻な管理を実施する必要が示唆された。 2.同様に、術後患者における精神医学領域の検討も行った。過去10年間の全手術患者を対象に検討すると、術後せん妄を来す患者が成人の全身麻酔手術患者において約4%存在することも判明した。ところが、この術後せん妄発症の危険因子の臨床的意義の重さは術前、術中、術後の時期においてほぼ同程度であったことから、術後せん妄予防のためには、術前、術中、術後の継続的な観察や治療が必要なことや、発生頻度やその治療経過を鑑みるとチーム医療の一層の充実を促し、病院横断的に術後せん妄治療に介入する必要が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
解析結果が概ね得られ、様々な学会発表等もおこなっている。今後も追加の解析を行う。ただし、論文作成にはまだ着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次の2点である。 はじめに、現在までに得られている知見を学術雑誌等に発表すること、次に手術患者の医療の質向上に資する目的で、術後痛、リハビリ、栄養、褥瘡、感染等の観点からビッグデータを活用して様々な知見を見つけ出すことである。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年4月上旬に開催される日本神経麻酔集中治療学会で発表があり、そのポスター制作費が必要となるから。
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次年度使用額の使用計画 |
上記、ポスター制作費に繰越金が充てられる
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