研究課題/領域番号 |
26462360
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
川人 伸次 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 特任教授 (60284296)
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研究分担者 |
北畑 洋 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (60161486)
松久 宗英 徳島大学, 糖尿病臨床・研究開発センター, 特任教授 (60362737)
高石 和美 徳島大学, 大学病院, 講師 (20325286)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 周術期管理学 / 再生医療 / 血管新生 / プレコンディショニング |
研究実績の概要 |
近年の分子生物学や分子発生学などの生命科学の進歩により、組織の発生が解明されるようになり、障害された臓器の再生が実現可能になりつつある。とりわけ血管新生は、再生医学の分野で大きな進歩を遂げ、臨床応用の段階に至った再生医療の一つである。本研究の目的は、再生医療における血管新生が周術期の血管プレコンディショニング(低酸素プレコンディショニングとリモートプレコンディショニング)に影響されるかどうかを基礎研究(in vitro & in vivo)と臨床研究を組み合わせ、様々な角度から検討することである。 本年度はヒト培養細胞を用いたin vitro実験を行った。低酸素刺激が細胞遊走と血管内皮細胞増殖に対する影響を評価した。コントロール群と低酸素群で、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC: Human Umbilical Vein Endothelial Cells)を37度5%CO2インキュベータ内で培養し,BD BioCoar 血管新生システムを使用し,培養22時間後に遊走した細胞を蛍光試薬Calcein AMで標識した後,蛍光度を測定した。細胞遊走はウシ胎児血清(FBS: Fetal Bovine Serum)を含む培地(Negative Control)と2%FBSを含む培地(Positive Control)で比較した。また,HUVECを96穴プレートに1500 cells/wellの濃度で培養し,発色試薬WST-8試薬(同仁堂)を使用し,吸光度を測定することにより,0, 36, 72時間後の細胞増殖能を測定した。 コントロール群と低酸素群では、いずれもFBS刺激により,細胞遊走は増加した。しかし,両群で有意な差は認められなかった。細胞増殖に関しても両群で,72時間後の吸光度に有意な差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は正常ヒト皮膚繊維芽細胞と臍帯静脈血管内皮細胞から構成された血管新生キット(クラボウ バイオメディカル社製)用いたin vitro 実験で管腔形成初期段階として枝分かれした管腔ネットワークを直接観察し、低酸素刺激の影響を定量評価する計画であった。しかし、使用を予定していた血管新生キット(クラボウ)が販売停止のため入手困難となったため、実験内容を変更した。細胞遊走と血管内皮細胞増殖は,それぞれ血管新生の重要な課程であるため、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC: Human Umbilical Vein Endothelial Cells)を用いて低酸素刺激が細胞遊走と血管内皮細胞増殖に対する影響を評価する研究に変更した。プロトコール変更、実験ノウハウ確立に若干の時間を要した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度はin vivo 実験を計画している。ラット虚血(全身・上肢または下肢)モデルを作成し、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の変化を観察する。 オスのWister系ラット(250-300 g)を吸入麻酔薬(セボフルラン)により麻酔導入・維持し、気管切開、人工呼吸管理下に大腿動静脈よりカニュレーションし、輸液ルート、動脈圧測定・採血用とする。コントロール群は通常の酸素投与下に正常酸素分圧(PaO2 80 mmHg以上)を12時間維持する。低酸素群は血行動態を記録しながら全身性の低酸素負荷(PaO2 50mmHg以下)または上肢・下肢60分の血流遮断を行い、12時間麻酔維持する。2時間毎に採血し、VEGF enzyme-linked immunosorbent assay kitを用いマイクロプレートリーダーでVEGFを測定する。
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次年度使用額が生じた理由 |
使用を予定していた血管新生キット(クラボウ)が販売停止のため入手困難となったため、実験内容を一部変更した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC: Human Umbilical Vein Endothelial Cells)を用いて低酸素刺激が細胞遊走と血管内皮細胞増殖に対する影響を評価する研究に変更した。細胞遊走と血管内皮細胞増殖の実験は現有設備で試行可能であったため、新規設備備品購入の必要性が減少した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度はin vivo実験が中心となるため、主に実験動物・試薬類などの消耗品費と研究成果発表のための旅費等が必要になる。繰越金は試薬類などの消耗品購入に使用する予定である。
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