研究課題/領域番号 |
26462369
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研究機関 | 名古屋市立大学 |
研究代表者 |
平手 博之 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20363939)
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研究分担者 |
有馬 一 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (20254295)
祖父江 和哉 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90264738)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 人工呼吸器関連肺障害 / 抗酸化物質 |
研究実績の概要 |
人工呼吸療法は、呼吸不全時の呼吸サポートや全身麻酔時の呼吸管理など、広く使用されている。一方で、人工呼吸自体が肺に傷害をあたえる人工呼吸器関連肺傷害(ventilator induced lung injury:VILI)は大きな問題であり、患者に多大な損失を与える。また、治療期間延長により医療経済的にも大きなマイナスをもたらす。したがって、予防手段の開発は大変重要であるが、有効な方法は少ない。これまで申請者は、様々な抗酸化物質を投与して、その後人工呼吸を施行して、肺胞洗浄液や肺の検体を採取し分析してきた。現在のところ、人工呼吸器関連肺傷害の発生しやすい集中治療において実際に使用頻度が高く抗酸化作用があると言われている薬物を試したところでは、有意な差をもたらす薬物を同定することはできなかった。そこで引き続き、集中治療領域で経管による栄養療法が現在非常に重要な地位を占めることから、消化管からの栄養療法で肺傷害軽減を実現できないかということに着目した。抗酸化作用の物質を含む経管栄養剤とコントロールの経管栄養剤を1-2週間マウスに与え、それらに人工呼吸を施し、同様に肺の検体を採取し、肺傷害の軽減作用が認められるかを検討した。しかし、抗酸化、コントロールによらず、いずれも通常の食餌よりも人工呼吸による侵襲自体に対する耐用性が低く、人工呼吸プロトコールの再検討が必要であり、様々な呼吸条件で試してみたものの、経管栄養剤の種類によって肺傷害の軽減作用を確認するには至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
特定の薬剤の抗酸化作用が、人工呼吸時に肺保護的に作用し人工呼吸器関連肺傷害を軽減する報告は実際あるが、今回の条件では、肺傷害自体があまり顕著でなく、いろいろな条件の修正を余儀なくされた。集中治療領域ではしばしば人工呼吸療法を行うが、主に急性期の短期治療であり、本実験系の薬物投与も事前から継続した長期投与ではなく短期間併用であったため、集中治療の実臨床には即しているものの、動物実験としては有意な結果が出なかった可能性が考えられる。また栄養的なアプローチは、一定期間事前投与して人工呼吸を試みてみたが、経胃管からの定量投与ではなく、あくまでもマウス自身の摂取に依存する形となり、十分量投与できていたか等解決すべき課題が多い
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今後の研究の推進方策 |
糖尿病が免疫力に影響を与える事実は確認されている。多くの疾患のおいて糖尿病がリスク因子になっていることが多いが、人工呼吸器関連肺傷害に関しては糖尿病が保護的に働くという報告が多い一方、逆に悪化したという報告もあり、何らかの影響を肺にも与えうる可能性がある。糖尿病の患者は近年増加傾向であり、また集中治療を要する患者の多くは耐糖能異常を来しており、糖尿病の影響に人工呼吸の侵襲を加え、それらに抗酸化作用の薬剤、栄養を組み合わせて、肺傷害の差を確認できないかについて検討してみる。
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次年度使用額が生じた理由 |
人工呼吸器関連肺傷害に対して保護的に作用しそうな様々な薬剤を試してみたため、予定より時間がかかった事、また得られた実験の結果を検討した上で、その後の実験の進め方に関して、方針の微調整、変更も含め、再検討の時間をとる必要があったことなどから、現在若干進行が遅れているため
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次年度使用額の使用計画 |
糖尿病が免疫力に影響を及ぼすため、biotraumaの性質がある人工呼吸器関連肺傷害において、糖尿病のモデルを使用して実験を行うとその影響が確認できる可能性があるため、それらの購入に一定額が必要となる。
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