人工呼吸器を使用する患者は多く、人工呼吸器関連肺傷害(VILI)が問題となっているが、有効な予防法は確立されていない。本研究では、マウスのVILIモデルを作成して抗酸化物質を投与することにより、VILIの軽減作用を確認し、新たな予防法の確立を目指した。 マウスのVILIモデルは、換気回数、換気量、換気時間、呼気終末陽圧値を組み合わせた人工呼吸器の条件で作成した。血液ガス分析で、炭酸ガス分圧が正常範囲内となる条件を検討し、気管支肺洗浄液(BALF)のタンパク濃度やサイトカインを測定して肺傷害の指標とした。換気容量を増やすことでBALF中のタンパクやサイトカインの増加を確認し、様々な傷害レベルのVILIモデルを確立した。 このモデルに、抗酸化物質の投与後に人工呼吸を実施してVILIの軽減を検討したが、有効性のある物質を同定することはできなかった。そこで、経管栄養に着目し、消化管からの抗酸化物質の吸収によりVILIの軽減ができるか検討することにした。抗酸化物質を含む経管栄養剤を事前に投与したマウスに人工呼吸を行ったが、VILIの軽減作用は認められなかった。 そこで、近年、糖尿病の患者数が増加していることから、糖尿病におけるVILIについて検討することにした。糖尿病モデルマウスのAKITAマウスを使用し、徐放型インスリン(Ins)埋め込みによる血糖コントロールモデルを作成した。このモデルに人工呼吸を実施したが、AKITAマウスのバックグラウンドであるC57BL/6マウスで4時間以上良好な状態で生存できる設定では、Ins埋め込み群が過度の低血糖となり死亡した。Ins埋め込み群が生存できる条件に変更しても、Ins非埋め込み群が致死的な高血糖となり死亡した。人工呼吸中の糖負荷も行ったが、血糖の維持ができず、AKITAマウスによるVILIの検討は困難だった。
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