研究課題/領域番号 |
26462372
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
川口 昌彦 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60275328)
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研究分担者 |
松浦 豊明 奈良県立医科大学, 医学部, その他 (10238959)
林 浩伸 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30464663)
井上 聡己 奈良県立医科大学, 医学部, 准教授 (50295789)
緒方 奈保子 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (60204062)
田中 優 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (90448770)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 視機能障害 / 周術期 / 眼血流 |
研究実績の概要 |
周術期の視機能障害発生は術後患者の機能的予後に重大な影響を及ぼす。我々は、心臓血管外科手術において、10%以上の患者で何等かの視機能障害が発生していることを報告してきた。そのリスク因子や予防法を検討するために、レーザー・スペックル法を用いた眼底血流の評価に加え、術前後にNational Eye Institute Visual Function Questionnaire (NEI VFQ)を用いて、簡便にベッドサイドで視機能を評価する。これまで選択的脳分離体外循環を併用する弓部大動脈置換手術前後におけるNEIVFQの測定を10例に実施した。10例中に症候性視機能障害はなかったが、3例で無候性視機能障害が認められ。2例で眼底出血、1例で暗点が認められた。無症候性視機能障害を有する症例のNEIVFQの変化率は+1%で、なかった症例では+5%であった。統計学的差は認めなかった。症候性視機能障害を認めなかったため、NEIVFQの有効性については評価できないが、術後の視機能の質を評価することは可能であると判断した。また、脊椎手術をうてた30例に対しても術前後にNEIVFQを実施した。NEIVFQのスコアは術前72点、術後1日目72点、術後14日71点と優位な変化を認めなかった。1例でgeneral health(GH)項目の有意な低下は認めたが、全評価での低下は認めなかった。いずれの症例でも症候性視機能障害は認めなかった。本30例では比較的短時間の手術例が多かったため、更なる評価が必要と考えられるが、NEIVFQによる評価は術直後でも可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
心臓血管手術および脊椎手術におけるNEIVFQスコアの変化について検討し、評価可能であることが明らかになった。また、同時に眼底血流、視神経径、視覚誘発電位(visual evoked potential:VEP)モニタリングの評価も開始しており、計画どうり進行していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
心臓血管外科手術、脊椎脊髄手術、脳外科手術などにおける術後の視機能障害は患者の機能的予後にとって重要な因子であり、その発生頻度や予防法を検討することは周術期管理にとっての重要な課題である。これまでの検討で、周術期の視機能の質評価としてNEIVFQ使用の可能性が示唆された。また、心臓血管手術では無症候性の視機能障害も発生していることが明らかになった。更に症例数を増加し、症候性視機能障害とNEIVFQスコアの関連性、およびNEIVFQスコアの低下の程度や発生率などを評価していく。また、視機能に影響を及ぼすると考えられる、眼底血流、視神経径、視覚誘発電位(visual evoked potential:VEP)モニタリングの変化などとの関連性についても評価する。客観的指標への介入が術後の視機能悪化に寄与できる可能性がある。心臓血管外科での眼底血流、視神経径との関連性、脳外科手術におけるVEP変化と術後視機能との関連性などを評価していく計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
NEI VFQスコアの実施が主であったため使用費用が少なくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度より眼底血流、視神経径、視覚誘発電位などのモニタリングも実施していくため、その費用も必要となる。眼底血流測定においては携帯型への改良などの費用がかかるため、計上する必要がある。
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