研究課題/領域番号 |
26462375
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
廣瀬 宗孝 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50275228)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性乳房切除術後痛 / 慢性痛 |
研究実績の概要 |
1.慢性乳房切除術後痛は発症頻度が高く、神経障害痛や心因痛が関与すると考えられている。術前の不安状態はその発症を増加させ、手術時の胸部旁脊椎ブロックの併用は減少させるとの報告もある。そこで乳房切除術を受ける患者で、術前に認知機能、うつ状態、不安状態を評価し、手術時に神経ブロックのPectral nerves (PECS)ブロックを全身麻酔に併用した場合の、術後急性痛と慢性乳房切除術後痛を前向きに調査した。結果は、術後3か月目に慢性乳房切除術後痛を来した症例はなく、PECSブロックによる慢性乳房切除術後痛の予防効果を検討することはできなかった。この予想外の結果の理由として、日本人は欧米人に比べて慢性乳房切除術後痛の発症率が低い可能性が考えられた。 2.そこで高齢者の慢性痛と末梢血細胞DNAにおけるエピジェネティックな影響を調査するために、対象患者を術後痛のみでなく慢性痛一般に拡大することを検討した。腰痛症や帯状疱疹後神経痛による慢性痛患者の末梢血細胞の遺伝子発現とDNAメチル化を、DNAマイクロアレイを用いて測定した。また患者のうつ状態、不安状態、認知機能、基本的ADL、痛み評価(簡易マギル疼痛質問票および神経障害痛の指標としてdouleur neuropathique 4)も測定した。結果は平成27年度も引き続き患者数を増やした後に解析する予定であるが、現時点では痛み評価とbrain-derived neurotrophic factor (BDNF)のCpG islandにおけるDNAメチル化の増加が関与する可能性が示されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本邦における手術後の慢性痛発症頻度が不明であったため、慢性術後痛の発症頻度が高いと考えられている乳房切除術で発症頻度を調査したところ、予想以下の発症頻度であった。このため末梢血細胞DNAにおけるエピジェネティック変化を調査する対象を変更する必要が生じたため、達成度はやや遅れていると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
対象患者を慢性痛全般に拡大することで、研究計画を遂行可能であると考える。具体的には、腰痛症や帯状疱疹後神経痛による慢性痛患者の末梢血細胞の遺伝子発現とDNAメチル化を、DNAマイクロアレイを用いて測定し、また患者のうつ状態、不安状態、認知機能、基本的ADL、痛み評価(簡易マギル疼痛質問票および神経障害痛の指標としてdouleur neuropathique 4)も測定する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究対象患者の変更による研究の遅延により、遺伝子解析費用が差額として発生した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度以降に遺伝子解析費用、学会発表のための旅費、書籍購入費として使用する。
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