本研究は、インドシアニングリーン(ICG)と近赤外線分光法を用いることで局所脳血流を測定することを目的としていた。まずは中間段階として、Blood flow index(BFI)というこれまでにすでに報告されていた基準値からの変化量で脳血流変化を捉える方法の信頼性を頸動脈内膜剥離術で検討した結果、頸動脈遮断中はBFIは有意に減少することを捉えることに成功し、ICGによる定性的脳血流測定の信頼性は確かめることができた。 次の段階として、ICGの脳組織における最大血中濃度を推定する事により、CTなどで用いてられている最大血中濃度法を用いて、局所脳血流を定量化する方法の開発を試みた。現在、脳血流測定の標準的方法としてに用いられているPositron emission tomography(PET)の測定値と比較する研究を行った(n=20)。もやもや病の患者では患側と健側で脳血流に差がある場合があるが、我々の方法ではその差を検出することに成功し、PET検査と比較して遜色ない検査値を得ることができた。この方法を用いるとこれまで術中や集中治療室などでは測定できなかった脳血流を測定可能になる可能性が示唆された。また、測定値の精度を上げるために近赤外線分光法の測定に体位や頭蓋外血流の影響などを検討した。 現在、この方法を特許申請するための手続きに入っており、現在、技術の提供者である浜松ホトニクスと権利関係の調整中である。 また、この方法をもやもや病のバイパス手術の術中に行うことでバイパス手術の成否を検討する研究、基盤研究C「もやもや病に対する浅側頭動脈-中大脳動脈バイパス手術の脳血流変化と術後合併症」を現在行っている。
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