研究実績の概要 |
組織損傷時にホスホリパーゼA2を初発酵素として産生される脂質メデイエーターによる炎症細胞活性化が、神経系の脊髄レベル、末梢レベルでどのような変化をもたらすかを解明し、それらを適切な時期に抑制することにより、術後疼痛病態の増悪を阻止し、効果的な治療法を開発することが本研究の目的である。脂質メデイエーターの中でも強力な白血球活性化作用を持つロイコトリエンB4(LTB4)とその受容体BLT1の術後疼痛遷延化病態形成への関与について、BLT1欠損マウスを用いて研究を行った。イソフルレン麻酔下にてマウス足底の皮膚筋膜を切開し、筋肉剥離後皮膚を縫合する術後痛モデルを作成した。疼痛行動の解析には、von-freyテストによる機械的刺激に対する逃避反応を手術前、術後2時間、1日、2日、3日、4日、5日、7日、14日まで測定した。BLT1欠損マウス群では、野生型マウス群に比し、手術2時間後,1日後,2日後,3日後,4日後,5日後における手術側肢の機械的痛覚過敏の程度が有意に低値であった。LTB4-BLT1シグナルが初期の術後痛病態形成に重要であることが示唆された。 先行実験として行った、急性痛モデル(ホルマリン足底注入)でのLTB4-BLT1シグナルの末梢(足底)と中枢(脊髄)における疼痛メカニズムへの関与について、研究結果を国際学会(平成26年10月15th World Congress on Pain)にて発表し、Molecular Painに投稿後平成27年3月に掲載された。
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