研究課題/領域番号 |
26462377
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
伊藤 伸子 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80332609)
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研究分担者 |
山田 芳嗣 東京大学, 医学部附属病院, 教授 (30166748)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脂質 / 神経科学 / 疼痛学 |
研究実績の概要 |
組織損傷時にホスホリパーゼA2を初発酵素として産生される脂質メデイエーターによる炎症細胞活性化が、神経系の脊髄レベル及び末梢レベルでどのような変化をもたらすかを解明し、それらを適切な時期に抑制することにより、術後疼痛病態の増悪を阻止し、効果的な治療法を開発することが本研究のも目的である。脂質メデイエーターの中での強力な白血球活性化作用を持つロイコトリエンB4(LTB4)とその高親和性受容体BLT1の術後疼痛遷延化病態形成への関与について、BLT1欠損マウスを用いて研究を行った。麻酔下にてマウス足底筋を切開し、筋膜挙上後縫合閉鎖する術後痛モデルにて研究を行った。von Frey testによる機械的刺激に対する逃避反応を手術前、術後2時間、術後1日、術後2日、術後3日、術後4日、術後7日、術後14日まで測定した。BLT1欠損マウス群では野生型マウス群に比し、術後2時間、術後1日、術後2日、術後3日、術後4日に於ける手術側肢の機械的痛覚過敏の閾値が有意に低値であった。LTB4-BLT1シグナルが初期の術後痛病態形成に関与していることが示唆された。LTB4-BLT1シグナルが白血球活性化に影響することから、手術側肢足底皮膚と皮下組織中の炎症細胞浸潤について、フローサイトメーターでの解析を行った。足底組織中の好中球特異的抗体(Gr1とCD11b)陽性細胞の割合は、手術後WT群BLT1KO群ともに術後1日をピークとして漸減し、術後1日後、2日後、3日後ともBLT1KO群の方が低い傾向が認められ、術後1日後で有意に低かった。LTB4-BLT1シグナルは、術後の局所好中球浸潤を増大させ、術後痛の病態形成に関与する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験室周囲で大規模建設工事が行われており、騒音ストレスのためか遺伝子改変マウスの繁殖が滞っている。また、工事の振動で行動実験が中断されることがあった。
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今後の研究の推進方策 |
足底切開による術後痛モデルにて、足底局所組織中の炎症細胞浸潤についてフローサイトメトリーによる解析を進める。足底切開部への単球やマクロファージの浸潤について、それぞれのマーカーを用いて解析する。マウスの繁殖が一定でなく同週令のマウスを実験に用いることが困難であることから、BLT1受容体拮抗薬投与の効果について、von Frey testによる行動実験と足底局所組織中の炎症細胞浸潤の評価を優先して見て行く。術後痛モデルでシグナル増強が確認されているMAPキナーゼのリン酸化について、脊髄組織の免疫染色を行い、局所炎症細胞浸潤と平行した変化なのか、BLT1欠損マウスや拮抗薬投与群で抑制されるかについて解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験室周辺での大規模工事に伴い、騒音によりマウス繁殖が滞り実験が進行しなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
大規模工事は今年度末にほぼ終息したことから、次年度は順調にマウス繁殖が進み、また行動実験への影響も軽減されることが予想される。実験をより進行させ、試薬購入及び物品購入に使用して行く。また、英文学術誌への投稿費用に使用する。
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