研究課題/領域番号 |
26462378
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
馬場 洋 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00262436)
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研究分担者 |
藤原 直士 新潟大学, 医歯学系, 教授 (70181419)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 脊髄 / 細胞内カルシウム / 膜電位 / オキシコドン / ノルアドレナリン / プレガバリン / ビククリン / ラット |
研究実績の概要 |
平成26年度は最適の脊髄スライス作成法、染色法と記録法を確立することを主な目標としていた。膜電位と細胞内Ca2+イメージングの両方を行う予定であったが、まず変化率の大きいCa2+イメージングを行った。脊髄スライス作成はこれまでの電気生理実験と同様に週齢10週以上のラットから後根付き脊髄横断スライス(L5レベル)を作成し、①染色液(Rhod-2)の指摘濃度、②至適染色時間、③至適染色温度の決定を行った。①染色液濃度:通常、脳スライスではRhod-2の濃度は0.1mg/10ml程度であるが、成熟ラット脊髄はミエリンが多いため、この濃度では全く染まらず、溶解させることができる限界まで高濃度を試してみた。溶解させることができる限界の濃度は0.33mg/4mlであることがわかり、この濃度だとスライスの内部までRhod-2を到達させることができることがわかった。②染色時間:通常、脳スライスでの染色時間は30分程度であるが、高濃度Rhod-2でも30分では染色できず、60分・90分の染色時間を試してみた。その結果、十分な染色には最低90分が必要であることがわかった。また、同様の条件でスライスパッチクランプ記録を行い、90分の染色でもスライス内の細胞が生きていることを確認した。③至適染色温度:Rohd-2は細胞膜通過性を良くするためアセトキシメチル体になっている。これが細胞内に入ると細胞内エステラーゼによって加水分解を受けアセトキシメチル基が外れる。エステラーゼ酵素が上手く働くには体温と同じ37℃付近が理想であるが、酸素供給と需要のバランスを考えるとより低温の方が有利と考えられる。そこで3つの温度、25℃、28℃、36℃での染色を試してみたところ、28℃程度で染色することが最も変化率が高かった。以上のように、①染色液の指摘濃度は0.33mg/4ml、②至適染色時間は90分、③至適染色温度は28℃を決定することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミエリンが多い成熟動物の脊髄スライスを膜電位感受性色素やCa指示薬で染色するのは困難であり、これまで成功していなかった。そのため、まずイメージングのための方法論を確立することが非常に困難であることが予想されていたが、少なくとも細胞内Ca2+に関しては高濃度指示薬を用いて90分以上染色することにより、予想以上にシグナルノイズ比の良い鮮明な画像が記録できることがわかった。また、脊髄レベルで鎮痛効果を発揮すると考えられているオピオイドの1つであるオキシコドンや下行性疼痛抑制系の伝達物質の灌流投与により後根刺激による後角細胞の興奮の広がりが抑制され、脊髄内投与で痛みを惹起するGABA受容体拮抗薬のビククリンで興奮の広がりが増強することが確認された。これらの観察はこれまでの電気生理のデータと一致するものであり、脊髄スライスの作成と染色が適切に行われていることが確認できた。神経障害性疼痛モデル動物の作成はまだ行っていないが、正常動物(ラット)における方法論は完成しつつあり、研究全体としてはおおむね順調と思われる。
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今後の研究の推進方策 |
現在は後根付き横断脊髄スライスでイメージングを行い、脊髄内での痛覚情報の広がりを観察している。 今後は脊髄縦断スライスで頭尾方向の興奮の広がりを正常ラットで観察し、その後は坐骨神経を物理的に損傷した神経障害性疼痛モデルラット、有痛性糖尿病性神経障害モデルラットでの変化を観察する予定である。さらに、神経障害性疼痛の治療薬の影響を観察する予定である。 また、現在はCa2+イメージングを行っているが、膜電位感受性色素を用いた膜電位の光学的イメージングも行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
脊髄切片作成機(マイクロスライサー)を平成26年度に購入予定であったが、平成27年に新製品が発売予定との情報が入ったため、少し購入時期を遅らせ、より性能の良いものを購入した方が良いと判断した。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年に同等の新製品を購入予定である。現時点で既に発注済みである。
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