研究課題/領域番号 |
26462380
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
田中 聡 信州大学, 学術研究院医学系, 准教授 (60293510)
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研究分担者 |
杉山 由紀 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (10468100)
川真田 樹人 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90315523)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 術後痛 |
研究実績の概要 |
本研究は、開腹術後痛が強い原因を明らかにし、その鎮痛法を開発することを目的としている。 腹部の皮膚のみ切開した場合には、痛覚過敏は生じるものの、歩行運動の障害はなかった。皮膚のみの切開に加えて、腹膜まで切開が及んだ場合には痛み関連行動(歩行運動の減少)が強く持続し、脊髄後角ニューロンが数多く活性化することが明らかになった。また、虫垂切除という腹部操作が加わった場合には、痛み関連行動は腹膜切開とは変わらないものの、体重減少が長く持続した。これらの結果は、侵害刺激が腹部の筋肉に及ぶと、皮膚切開のみに比べて痛みが強く持続し、その原因としては多くの侵害刺激情報が脊髄に到達したことに由来すると考えられる。虫垂切除は、痛みそのものを増加していないのかもしれないが、腹部操作は体重減少の原因となっており、それゆえ活動性の低下となって表れたと考えられる。 局所麻酔薬の創部投与により、腹部切開2時間後の痛み関連行動が減弱し、また活性化される脊髄後角ニューロンの数も減少した。また、痛覚過敏の領域も狭小化した。一方、局所麻酔薬の背部投与は、腹部の疼痛を減弱させなかった。これらの結果は、局所麻酔薬の創部投与は、全身的な効果ではなく、主として末梢からの侵害刺激情報が脊髄に到達することを抑制することにより、鎮痛作用をもたらしたことを示唆する。創部の局所麻酔薬投与による痛覚過敏領域の狭小化作用のメカニズムについては、更なる検討が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ実験計画の年度予定通りに進行している。開腹手術に対する局所麻酔薬の創部投与の鎮痛効果を、行動分析と免疫染色で確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
局所麻酔の投与の鎮痛効果は一過性であった。創部にカテーテルを留置し、更に長期間の鎮痛効果を生み出す投与方法を探索する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成27年度は、消耗品が予定より安価に済んだため、次年度使用額が「0」よりも大きくなった。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は平成28年度請求額と合わせて、局所麻酔薬投与のためのカテーテルや、ミクログリアの抗体を購入予定である。
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