本研究の目的は、開腹術後の痛みのメカニズムと局所麻酔薬の鎮痛メカニズムを明らかにすることであった。本研究結果の概要は下記の通りである。①皮膚切開は、創部周辺の狭い領域で痛覚過敏の原因となるが、歩行行動の抑制は小さい。②筋肉まで切開が及ぶと、広範囲に痛覚過敏が生じるだけでなく、歩行行動を強く抑制する。③皮膚切開に比べて腹部筋肉切開は多くの脊髄後角ニューロンを活性化させる。④局所麻酔薬の創部投与は侵害刺激情報が脊髄へ伝達されることを抑制する。⑤虫垂切除群の痛み関連行動は腹部切開群のそれと比べて有意差は無いが、体重減少からの回復は遅延した。⑥組織損傷の程度に応じて、痛覚過敏や痛みの程度が異なる。
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