研究課題/領域番号 |
26462381
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
福井 聖 滋賀医科大学, 医学部, 講師 (80303783)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | Voxel-based morphometry / 慢性疼痛 / 脳形態変化 / 灰白質密度 / 灰白質体積 |
研究実績の概要 |
23人の慢性腰痛患者にVBMを施行し脳形態変化を評価した。11 人に扁桃体,下前頭回眼窩部,嗅内皮質,島皮質で灰白質減少を認めた。変化を認めた3 人に対し4 ヵ月の治療後再度VBMを施行し形態的変化を調べたところ,全員が正常化した。慢性腰痛患者は痛みに関連する脳領域に変化が生じる可能性があり,治療により脳萎縮が正常化する可能性が示された。 慢性腰痛患者にVBM を施行し、恐怖や不安など,負の情動の処理において中心的役割を担う扁桃体の脳形態と4 つの痛みの質問表、PDAS、PCS、HADS、NRSを用いて疼痛評価を行い,扁桃体の灰白質体積変化との相関を調べた。 扁桃体の形態変化において右側扁桃体の方が左扁桃体に比べ,有意に灰白質体積が低下していた。さらに右側扁桃体灰白質体積と疼痛生活障害尺度との相関が認められた。HADS,PCS の破局化思考、不安,抑うつと扁桃体灰白質体積との相関は認めなかった。 発症してから3か月以上経過している23名の慢性腰痛患者を対象とし、VBMを施行し,ROIのz値を調べた。VBM施行する前後1週間以内に外来にて、①PDAS、②PCS、③HADS、④NRSの各スケールを測定し、98か所のROIのz値との相関を調べた。 PDASは前帯状回を含めた9か所の脳領域との相関が認められ、今回使用した痛みの評価スケールの中では最も多くの領域と相関を示した。HAD-A,Dは海馬(全体)および海馬後部の灰白質体積に相関が認められた。左が右より灰白質体積との相関が認められた。痛みの強さを表すNRSは中心旁小葉(S1に含まれる)と負の相関を認めた。NRS値が高いと灰白質体積が増大する傾向を示した。VBMによる脳灰白質変化と痛みの評価スケールを同時に施行することは、痛みを多面的に評価する方法の一つになりえる可能性があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
VBMを用いることで、実際の患者において、3TMRI装置で98か所の局所脳の脳灰白質密度、脳灰白質体積が測定できるようになった。慢性腰痛患者ではVBMで、扁桃体,下前頭回眼窩部,嗅内皮質,島皮質で灰白質減少を認めた。変化を認めた3 人に対し4 ヵ月の治療後再度VBMを施行し形態的変化を調べたところ,全員が正常化した。慢性腰痛患者は痛みに関連する脳領域に変化が生じる可能性があり,治療により脳萎縮が正常化する可能性が示された。 慢性腰痛を中心とする慢性痛患者に施行し,脳形態変化を調べ、局所脳の脳灰白質体積変化と①PDAS、②PCS、③HADS、④NRSの各問診表との相関について検討した。PDASは前帯状回を含めた9か所の脳領域との相関が認められ、今回使用した痛みの評価スケールの中では最も多くの領域と相関を示した。HAD-A,Dは海馬(全体)および海馬後部の灰白質体積に相関が認められた。左が右より灰白質体積との相関が認められた。痛みの強さを表すNRSは中心旁小葉(S1に含まれる)と負の相関を認めた。NRS値が高いと灰白質体積が増大する傾向を示した。 VBM実際の慢性痛患者に臨現場でタスクをかけることなく、局所脳の脳灰白質体積、脳灰白質密度が測定でき、様々な問診表との相関も認められたので、慢性の痛みの客観的な評価法ちとして臨床応用できる可能性が高いことが認められた。 また治療前後で、治療がうまくいっておるものは正常化していたので、治療結果を判定できる評価法にさらに発展していく可能性があると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
慢性疼痛患者の対象として、VBMを施行し、全脳のすべての局所脳領域の灰白質密度、 灰白質体積測定を行う。痛み関連脳領域を中心に慢性疼痛患者の問診表で得られた、抑うつ、不安、破局化思考、日常生活の障害度との相関解析を行う。慢性疼痛患者の慢性腰痛患者、脊椎手術後疼痛患者、神経障害性疼痛患者を対象として、VBMを施行し、全脳のすべての局所脳領域の灰白質密度、 灰白質体積測定を行う。得られたデータを以下のように解析を行う、1.慢性疼痛患者において、不快情動処理機構、認知機能、ドーパミン作動性中枢性鎮痛系、疼痛抑制系の局所脳領域の灰白質密度の評価を行う。2. 精神科的治療、心療内科的治療、集学的治療を必要とした慢性疼痛患者群で、不快情動処理機構、認知機能、ドーパミン作動性中枢性鎮痛系、疼痛抑制系の局所脳領域の灰白質密度の評価を行い、健常人と比較検討し、統計的な検討を行う。
集学的治療を必要とした慢性疼痛患者群で、VBMを施行し、全脳のすべての局所脳領域の灰白質密度、 灰白質体積測定を行う。治療により痛みが緩和する患者では、痛みが軽減しないものに比較して、痛みが正常化するに伴い、不快情動処理機構、認知機能、ドーパミン作動性中枢性鎮痛系、疼痛抑制系の局所脳領域の灰白質密度がどのように変化するか検討する。痛み関連脳領域を中心に慢性疼痛患者の問診表で得られた、抑うつ、不安、破局化思考、日常生活の障害度との相関解析を行う。平成26、27年度の結果をふまえて最終的にVBMを用いた慢性疼痛患者の不快情動の処理、認知、ドーパミン鎮痛系、疼痛抑制系などに関係する、痛み関連脳領域の灰白質密度、 灰白質体積を測定する方法を、痛みの脳機能画像評価法として確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2014年度国際疼痛学会がアルゼンチンで開催され、円安も重なり航空運賃、参加費が予想外に高額になったことが理由である。研究計画も順調に進んでおり、研究成果を統計解析し、更に発表していく段階にあることも理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
慢慢性疼痛患者を対象として、VBMを施行し、全脳のすべての局所脳領域の灰白質密度、 灰白質体積測定を行う。得られたデータを以下のように解析を行う、 集学的治療を必要とした慢性疼痛患者群で、VBMを施行し、全脳のすべての局所脳領域の灰白質密度、 灰白質体積測定を行う。治療により痛みが緩和する患者では、痛みが軽減しないものに比較して、痛みが正常化するに伴い、不快情動処理機構、認知機能、ドーパミン作動性中枢性鎮痛系、疼痛抑制系の局所脳領域の灰白質密度がどのように変化するか検討する。痛み関連脳領域を中心に慢性疼痛患者の問診表で得られた、抑うつ、不安、破局化思考、日常生活の障害度との相関解析を行う。痛み関連脳領域の灰白質密度、 灰白質体積を測定する方法を、痛みの脳機能画像評価法として確立する。
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