研究課題
難治性慢性疼痛患者を対象としてvoxel-based morphometry (VBM)を施行し、全脳の局所脳領域110か所で灰白質体積の測定を行った。VBMは3T MRI装置でSPM8を用いてDARTEL法による解析で、各年代89人~118人の健常人で得られた正常値と形態学的変化を比較検討した(Zスコア)。さらに滋賀医大で測定した健常人19人と比較検討を行った。難治性慢性腰痛患者54人にVBMを施行し、恐怖や不安など不快情動処理において中心的役割を担う扁桃体、眼窩前頭野、側坐核などのドーパミン疼痛抑制系など含め、全脳の局所灰白質体積を、どの部位が慢性痛の病態に関与しているか横断研究で評価した。体積は脳の110か所ごとに、ケースとコントロールのアウトカムを比較し、回帰分析を行い、委縮比、体積は、110か所ごとに、ケースとコントロールのアウトカムを比較した(T検定)。難治性慢性疼痛患者54人で、ROI委縮率を健常人19人と比較し、回帰分析を施行したところ、左右扁桃体(右>左) (P<0.01) 、左右島( (P<0.01) 、左右前頭眼窩野(OFC) (P<0.01) 、に有意な委縮(P<0.01) が認められた。扁桃体では、右側が左側より有意に委縮していた。扁桃体は負の情動の処理において中心的役割を担う神経核で、痛み患者では,恐怖や不安など過剰な負の情動は中枢性鎮痛機能を低下させ,慢性疼痛へ転化させる引き金、慢性疼痛を維持する原因になると考えられた。また難治性慢性疼痛患者では、扁桃体の機能低下に加えて、眼窩前頭野などのドーパミン鎮痛抑制系の機能低下が、痛み行動として発現していると推察された。VBMの結果から、慢性疼痛とは、不快情動の処理、ドーパミン下行性疼痛抑制系が破たんしている状態、脳内に可塑的変化が生じ、中枢性鎮痛機構がうまく働いていない状態と考えられた。
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Journal of Pain Research
巻: 10 ページ: 287-293
ペインクリニック
巻: 37 ページ: S500-513
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