研究課題/領域番号 |
26462392
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
宮島 直人 北海道大学, 大学病院, 助教 (40581111)
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研究分担者 |
篠原 信雄 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90250422)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ユビキチン / 前立腺癌 |
研究実績の概要 |
ユビキチン系蛋白質分解は、ユビキチン化酵素が標的蛋白質をユビキチン化(分解標識)し、プロテアソームと呼ばれる複合体で速やかに分解する機構である。ユビキチン化は、シグナル伝達や転写に関わる標的蛋白質を分解することで、適切なシグナル・転写活性調節を行っている。反面、ユビキチン化酵素の異常は、癌や神経変性疾患等の原因となっている(腎癌におけるVHL、乳癌におけるBRCA1等)。前立腺癌で特異的に発現するユビキチン化酵素TRIM68の機能解析を行い、ユビキチン化酵素を介した去勢抵抗性前立腺癌に対する新しい治療薬への臨床応用に展開するための基盤となる研究を行っている。 今回、すでに作成済であるTRIM68恒常過剰発現・前立腺癌細胞株(22RV1)を用いてルシフェラーゼアッセイにてアンドロゲン受容体の転写活性を調べた。結果、アンドロゲン刺激により通常の22RV1細胞に比べてTRIM68過剰発現22RV1細胞において有意にアンドロゲン受容体の転写活性が上昇していることが判明した。 この細胞株を用いて癌に関連する表現型を調べた。残念ながら、この細胞株はあまり細胞増殖が増加していなかったが、TRIM68の発現を減弱させた細胞(ノックダウン細胞)では細胞増殖の抑制が確認された。これにより、TRIM68が前立腺癌の細胞増殖維持に関与している可能性が示唆された。 今後、さらに癌化に関連する表現型(コロニー形成能など)を調べる予定である。また、ノックダウン細胞を使った実験、マウスを使ったXenograft実験なども予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
免疫沈降法およびツーハイブリット法にてTRIM68に結合する蛋白質(p300など)を同定したが、ユビキチン化アッセイ(TRIM68がその蛋白質を実際にユビキチン化・分解するかどうかを調べる検査)では、残念ながらTRIM68はその蛋白質を分解せず、基質(標的)蛋白質ではなかった。 そのため、当初の研究計画よりは遅れているのが現状である。
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今後の研究の推進方策 |
TRIM68恒常過剰発現・前立腺癌細胞株(22RV1)をマウス皮下に注入し腫瘍を形成させる、いわゆるXenograft modelの実験を予定している。これにより、TRIM68のInvivoにおける腫瘍形成能を解明する予定である。 また逆に、TRIM68が豊富に発現している前立腺癌細胞株LNCaPからTRIM68をノックダウン(発現抑制)し、同様のXenograft実験を行う予定である。この実験により、TRIM68がLNCaP細胞の腫瘍形成能に及ぼす影響を解明できる。
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次年度使用額が生じた理由 |
Invitro実験遅延のため、当初予定していたマウスを用いたXenograft model実験を平成27年度に遂行できなかった。また、期待していた結果が出なかったため、当初予定していた国内・国外の学会発表が出来ていない。そのため次年度使用額が生じている。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞株の維持費、抗体の購入、マウスの購入・維持費に使用を予定している。また、学会に積極的に参加予定なので、そこでの使用も考慮に入れている。
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