研究課題
腎癌には、早期発見や根治治療後の治療経過を反映するような腫瘍マーカーはなく、画像診断でしか評価できないため、診断から根治治療後の治療効果を反映するような腫瘍マーカーの開発が望まれている現状である。糖鎖抗原DSGb5は、腎癌組織から抽出され同定された糖脂質糖鎖抗原であるが、腎癌組織での発現が転移に関連していることを示唆する知見が得られ、腎癌細胞を用いた研究では、NK細胞の細胞障害活性を抑制する働きから免疫系を介して腎癌の悪性化に関与しているものと考えられている。さらなる解析の結果、糖鎖抗原DSGb5は、腎癌の細胞運動能を亢進することを認めて、論文発表するに至った。(2015年 Tohoku J Exp medicine) 申請者らの作成した糖鎖抗原DSGb5に対するモノクローナル抗体5F3を用いて、今回、腎癌摘出標本ホルマリン固定パラフィンブロック切片に対する免疫染色行った。本抗体を用いた腎癌組織に対する免疫染色は、これまで凍結切片を用いたものを行っており、ホルマリン固定パラフィンブロックに対する免疫染色は、行われていなかったが、本年度の研究により、ホルマリン固定パラフィンブロックに対する免疫染色において、安定した再現性のある染色方法を確立することができた。 その結果、正常腎組織では、これまでの凍結切片組織で染色性が確認された近位尿細管細胞に加えて、集合管細胞でも発現していることが確認された。根治的腎摘除術を施行された患者や、腎部分切除術を施行された患者など、多数例の腎癌患者を対象として免疫染色を施行したところ、腎摘標本での病理学的パラメーターの中で脈管侵襲と相関する知見が得られた。さらに、腎摘後の早期の転移すなわち予後予測因子として、有用であることが判明し、日本癌治療学会、泌尿器科分子細胞研究会などで発表を行った。
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Glycoconjugate Journal
巻: 34 ページ: 267-273
10.1007/s10719-017-9763