研究課題/領域番号 |
26462397
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
宮崎 淳 筑波大学, 医学医療系, 准教授 (10550246)
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研究分担者 |
西山 博之 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20324642)
高岡 栄一郎 筑波大学, 医学医療系, 講師 (50625340) [辞退]
河合 弘二 筑波大学, 医学医療系, 講師 (90272195)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 癌免疫 / 膀胱癌 / BCG / 脂質免疫 / リポソーム |
研究実績の概要 |
Mycobacteriuma bovis bacillus Calmette-Guerin (BCG)の膀胱内投与は、既存の癌免疫療法の中でもっとも有効性が確立した治療法であるが、副作用が強いため使用に困難を生じることが多々ある。一方で、最近では、BCGの細胞壁成分の単一成分である、ミコール酸がCD1抗原として強力な細胞性免疫誘導を示すことが明らかとなってきた。本研究ではこれら細胞壁成分を、安定的に抽出する技術を開発することが目標であった。 平成26年度において、BCGからミコール酸を抽出する抽出方法が確立され、平成27年度においては、α、メトキシ、ケトの3分画からなるミコール酸をそれぞれ単一にすることに成功した。すなわち単にミコール酸を抽出するとαメトキシケトの3分画が混ざっているが、それぞれを薄層クロマトグラフィー上で展開し、カラムで精製することによって単一の成分にすることができた。これら単一のミコール酸にリノレン酸あるいはオレイン酸、コレステロールなどを添加し、超音波破砕、凍結融解法を組み合わせることで、リポソームに包埋することに成功した。平成26年度においては、基質に卵黄レシチンを用いていたが、卵黄レシチンではリポソーム化できるものの、細胞毒性が強く、実臨床にそぐわないと考えられた。そこで、現在は、主にオレイン酸を基質にしている。できたリポソームは粒子径およびゼータ電位を測定し、細胞への親和性を検証している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ミコール酸の抽出およびリポソーム化の方法についてはほぼ確立できた。粒子径は150nm前後であり、フィルター滅菌が可能な粒子径である。また150nm前後であれば、細胞親和性も十分に保たれると考えられる。さらにデンドリマーを追加することで、電荷も陽電位にすることができ、マイナス電位である膀胱上皮細胞により親和性を保つことができるようになった。ミコール酸はα、メトキシ、ケトの3分画からなるが、どの分画がもっとも免疫活性が強いかこれから検討する。現在までのところ、マウス皮下接種モデルにおいては、メトキシミコール酸リポソームに強い抗腫瘍効果を認めている。そのため、メトキシミコール酸を中心に、メカニズムの解明、サイトカインなどの誘発実験、ノックアウトマウスを用いた抗腫瘍効果の検証、正所性モデル、肺転移モデルを用いた、抗腫瘍効果実験などを行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスにおける抗腫瘍効果の評価。メトキシミコール酸リポソームが本当に抗腫瘍活性があるか、繰り返し検証する。抗腫瘍活性を確証できた際は、メトキシミコール酸リポソームを蛍光標識し、細胞内に取り込まれることを共焦点顕微鏡で確認する。細胞内に取り込まれることを確認後、細胞内に取り込まれたリポソームを電子顕微鏡で確認すると同時に、ミコール酸リポソームそのものの電子顕微鏡での観察を行う。また、ミコール酸リポソームの上皮細胞に対するアポトーシスや細胞分裂に対する影響を、FACSを用いて検討する。さらに、マウスに尾静注し、脾臓細胞におけるアジュバント活性についても検証する予定である。
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