本研究では、ヒト腎癌由来iPS細胞における細胞記憶を担う遺伝子群を同定し、ヒト腎癌治療に有効な、新規治療標的分子を絞り込む。26年度では、ヒト腎癌由来iPS細胞を新規に10-20クローン樹立し、初期化をマイクロアレイにより評価した。初期化が確認されたクローンに対して、iPS化前後でDNAメチル化の差異を解析し、ヒトES細胞データとの比較により、万能性を規定する遺伝子群と癌を規定する遺伝子群を決定した。27年度以後では、26年度で樹立したヒト腎癌由来iPS細胞を癌細胞培養上清から精製したexosome処理し、癌幹細胞へ分化誘導した。次に誘導した癌幹細胞をSCIDマウスへ移植し、増殖能を指標として癌幹細胞と確認された腫瘍を切り出し、奇形腫ではなく、癌腫であることを組織学的に確認した。組織学的に癌と確認された腫瘍からDNAを抽出し、26年度に得られた癌を規定する遺伝子群とメチル化プロファイルを比較し、ヒト腎癌における細胞記憶を規定する遺伝子群を同定する。最後に、同定された遺伝子のsiRNA処置や強制発現による、癌に対する作用を検証した。Infinium解析で得られた遺伝子を特異的かつ強制的にOFFあるいはONとすることにより、腎癌細胞の増殖抑制作用、細胞死に対する効果を検証した。 1、10種類の腎癌細胞において、強制的ONとすべき遺伝子に関しては、iPS樹立時と同様にPlatE法を用い、レトロウイルスにより強制発現させる。強制的にOFFとすべき遺伝子については、siRNAを用いて遺伝子発現を抑制した。 2、1の処置後、細胞増殖、細胞死を評価し、特定した遺伝子群が新たな治療標的となりうるか検証した。
以上の検討により、4つの治療標的候補遺伝子が得られた。
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