研究課題/領域番号 |
26462403
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
藤井 靖久 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (70282754)
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研究分担者 |
齋藤 一隆 東京医科歯科大学, 医学部附属病院, 講師 (10422495)
木原 和徳 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 名誉教授 (40161541)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 筋層非浸潤膀胱癌 / 再発 / 進展 / 膀胱頸部 |
研究実績の概要 |
本研究の主な目的は、筋層非浸潤膀胱癌において、重大な事象である膀胱内再発、および進展を正確に予測できるモデルを構築し、実臨床の場で役立てることである。私たちは、世界で初めて、単一施設(東京医科歯科大学)の後ろ向きコホートよび前向きコホートを用いて、膀胱頸部の腫瘍発生が筋層非浸潤膀胱癌の新規症例において、進展の独立した予測因子であることを報告した(Fujii Y, et al. Eur Urol 1998, Kobayashi S and Fujii Y, et al. Urol Oncol 2013)。進展の予測モデルとして、T分類(pTa/1), Grade(1,2/3)および膀胱頸部腫瘍(なし/あり)の3因子からなる簡便なTMDUモデルを提唱した。 昨年は、2000年以後の東京医科歯科大学の前向きコホートを用いて、PWP(Prentice, Williams, and Peterson)モデルによる縦断的解析で、膀胱頸部腫瘍は再発例を含む筋層非浸潤膀胱癌において再発および進展の両者について独立した予測因子であることを示した。 本年は、東京医科歯科大学以外の11施設の新規の筋層非浸潤膀胱癌の後ろ向きコホートに基づき、膀胱頸部腫瘍が進展の独立した因子であることの外部検証を行った。1000例を超える多数の症例の解析においても、以前の東京医科歯科大学の単一施設の結果と同様の結果が得られ、TMDUモデルの進展の予測能が優れていることを示した。 さらに膀胱頸部の背側および腹側の何れかの腫瘍がより強い予測因子になるかの検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画で示した目標1.再発症例を含むコホートで、膀胱頸部の腫瘍発生が再発および進展の予測因子であること証明することは、昨年の達成できた。すなわち、私たちは、世界で初めて、膀胱頸部の腫瘍の存在が、再発例を含む筋層非浸潤膀胱癌において、再発および進展の予測因子であることを証明した。この内容については、2014年10月に開催された国際泌尿器科学会(英国、グラスゴー)にて発表した。さらに、東京医科歯科大学以外の11施設の新規の筋層非浸潤膀胱癌の後ろ向きコホートに基づき、膀胱頸部腫瘍が進展の独立した因子であることの外部検証を行った。1000例を超える多数の症例の解析においても、以前の東京医科歯科大学の単一施設の結果と同様の結果が得られ、TMDUモデルの進展の予測能が優れていることを示し、2015年5月に開催された米国泌尿器科学会(ニューオーリンズ)にて発表した。 これらの解析結果に基づき、目標2.縦断的な統計解析により、膀胱頸部腫瘍を予測因子に組み込んだ再発および進展の予測モデルの作成を進めた。進展に関しては、再発例を含めても従来のTMDUモデルと同様のモデルが優れた予測能を示すという結果が得られた。以上1、2については目標どおりの達成と考えられる。 一方、目標3.膀胱頸部腫瘍が再発、進展しやすいメカニズムの基礎解析については、現時点では十分な成果が得られなかった。平成28年度に進行させる予定であるが、具体的な方策については下記で述べる。
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今後の研究の推進方策 |
私たちは、上述のように、臨床的な検討により、膀胱頸部の腫瘍の存在が、再発例を含む筋層非浸潤膀胱癌において、再発および進展の予測因子であることを証明することができた。このことを基に、膀胱頸部腫瘍を組み込んだ進展の予測モデルを作成した。これについては従来のTMDUモデルが再発例に対しても有用であるという結果が得られた。一方、筋層非浸潤膀胱癌の再発率は非常に高く、膀胱頸部腫瘍を組み込んだ再発の予測モデルを作成したが、高い精度で再発を予測することができなかった。この問題は従来の他のモデルでも同様であり、膀胱頸部腫瘍の位置などを含めて、さらに解析を進める予定である。 また、目標3.膀胱頸部腫瘍が再発、進展しやすいメカニズムの基礎解析については、私たちは膀胱頸部腫瘍はより多くの膀胱癌幹細胞を含み、そのために膀胱頸部腫瘍は他の部位の腫瘍に比べ治療抵抗性で、再発、進展しやすいという仮説を立てている。この仮説を証明するために、膀胱癌の切除標本をCD44, CD44v6,KRT5, OCT-4(以上、膀胱癌幹細胞のマーカー)、p63(陰性マーカー)などで免疫染色を試みているが、現時点で有意な結果が得られていない。引き続き、膀胱癌幹細胞の頻度が腫瘍の発生部位により異なっているか、さらにそれが将来の再発や進展と関連するか、など予後との関連の解析を進める予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
私たちの研究計画で示した目標である、1.再発症例を含むコホートで、膀胱頸部の腫瘍発生が再発および進展の予測因子であることの証明、2.縦断的な統計解析により、膀胱頸部腫瘍を予測因子に組み込んだ再発および進展の予測モデルの作成、については目標どおりの達成度が得られている。 一方、目標3.膀胱頸部腫瘍が再発、進展しやすいメカニズムの基礎的解析っであるが、これまで十分な結果が得られておらず、したがって、この検討に必要な試薬などを当初の予定程購入していないため、予定より使用額が減じた。
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次年度使用額の使用計画 |
私たちは膀胱頸部腫瘍はより多くの膀胱癌幹細胞を含み、そのために膀胱頸部腫瘍は他の部位の腫瘍に比べ治療抵抗性で、再発、進展しやすいという仮説を立てている。この仮説を証明するために、膀胱癌の切除標本をCD44, CD44v6,KRT5, OCT-4(以上、膀胱癌幹細胞のマーカー)、p63(陰性マーカー)などで免疫染色を試みているが、現時点で有意な結果が得られていない。引き続き、膀胱癌幹細胞の頻度が腫瘍の発生部位により異なっているか、さらにそれが将来の再発や進展と関連するか、など予後との関連の解析を進める予定である。この検討のため、試薬購入を含め、本年度に次年度使用額である269,058円を使用させていただく予定である。」
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